2016 Fiscal Year Annual Research Report
自治体のミドルマネジャー保健師の役割行動指針の作成と学習支援プログラムの構築
Project/Area Number |
16H05606
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
杉田 由加里 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (50344974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 美延里 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授(移行) (00264903)
石川 麻衣 高知県立大学, 看護学部, 講師 (20344971)
緒方 泰子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (60361416)
石丸 美奈 (坪内美奈) 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (70326114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 行政保健師 / ミドルマネジャー / 役割行動 / 学習支援 / 成人学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
自治体における係長クラスのミドルマネジャー保健師の役割行動は、管理する小集団の業績に大きく影響すると考えられるが、業績の向上と人材育成の両輪を考慮するという組織のマネジメントの観点からの報告はみられない。そこで、ミドルマネジャー保健師の役割行動の拠り所となる役割行動指針を作成し、作成した指針にもとづく、学習支援プログラムが必要と考えた。 本研究の目的は、自治体のミドルマネジャー保健師の役割行動指針の作成と、役割行動指針にもとづく学習支援プログラムを構築することである。学習支援プログラムは成人学習理論を基盤とし、複数回の集合研修の間に実践を入れ込むという形式をとることで、実践経験から学ぶ力を高められる学習能力の向上を目指すものである。 平成28年度は、学習支援プログラムの構築にむけ、行政保健師の人材育成方法と成果が示されている先行研究を検討し、効果的な人材育成方法の資料を得ることとした。医学中央雑誌(WEB版)を用い、保健師の人材育成方法とその成果に関する文献として30件が該当した。人材育成の目的、方法、評価方法とその成果について整理し検討した。 次に、自治体のミドルマネジャー保健師の役割行動指針の作成にむけ、役割行動指針案を作成するために、インタビュー調査を実施した。ミドルマネジャー保健師としての経験を有する保健師(ベテラン保健師)9名へのインタビュー調査(調査A)と、ベテラン保健師と一緒に勤務した経験を有する、上司や同僚へのインタビュー調査(調査B)を実施した。調査Aでは、成果が上がったと捉えている事業に関する実践内容、ミドルマネジャー保健師として心がけている行動について聴取し、質的帰納的に分析した。調査Bでは、成果につながったと思えるベテラン保健師の行動、スタッフの力量向上に向け支援していると思えること等を聴取した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保健師の人材育成方法とその成果に関する文献として選択した30件より以下の点が明らかとなった。人材育成方法は研修が23件、OJTに関し3件、職場外研修と職場内研修の併用3件、実践からの学びが1件であった。効果の評価方法は定量的評価と定性的評価の併用が、14件、定性的評価のみが14件、定量的評価のみが2件であった。定性的と定量的評価の併用が多用されており、人材育成を企画する時に併用による評価ができるよう計画することが重要と考えられた。学習支援プログラムの構築に向け、必要とされる条件についての示唆をえることができた。 調査Aでは、ミドルマネジャー保健師自身が認識している役割行動が明らかとなった。事業の遂行に関する行動、スタッフ保健師に対する行動、同僚職員に対する行動、上司に対する行動、関係機関に対する行動が明らかとなった。さらに自分自身に対する行動も明らかとなった。事業の【成果を出すための事業内容の探索と遂行】が可能となるように、【確実な事業運営体制の構築】を図るという事業内容の充実と共に、スタッフに対し、【事業を遂行していく際の考えの共有】、【スタッフ全員の力量のアセスメント】にもとづく人材育成も実施していた。事業の充実とスタッフの人材育成の両輪を遂行する視点を持ち行動することが必要と考えられる。それには、ミドルマネジャー保健師自身が、【業務の振り返りから教訓を体得】する行動が可能となることが重要であると示唆された。 現在、上司や同僚からの意見を加味し、行動の拠り所となる役割行動指針案を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の3つの研究を遂行する。 1.ミドルマネジャー保健師の役割行動指針案の完成:28年度に実施した調査からミドルマネジャー保健師の役割行動指針案を、有用性、内容妥当性の観点から、都道府県本庁にて保健師研修を担当している実践者、および保健師研修に従事した経験を有する有識者より構成された専門家会議にて検討し、役割行動指針案を精錬する。 2.役割行動指針案をデルファイ調査より有用性と重要性について検証し、役割行動指針を作成(2017年度、前半):全国の全市区町村と全保健所にてミドルマネジャー保健師としての経験を1年以上有する保健師を対象に郵送調査を実施する。初回調査には、ミドルマネジャー保健師の能力開発に関する実態と困難感に関する項目も入れ込み、現状を明らかにする。研究協力者として約300人程度を見込んでいる。3回の質問紙調査より指針の項目に対する重要性、有用性に関し、5段階で評価してもらい、さらに自由意見も得る。質問紙調査の実施、その後の研究班内での検討を3回繰り返し、指針の項目を精錬・精選し、役割行動指針とする。 3.ミドルマネジャー保健師の学習支援プログラム案を作成(2017年度、後半):作成したミドルマネジャー保健師の役割行動指針を学習支援プログラムでの目標と捉え、内容を検討する。学習支援プログラムは、活用にあたってのねらい、目的、目標、基盤となる学習に関する理論、目標と連動したプログラム内容、プログラム評価より構成される。 作成した学習支援プログラムは、研修の立案・評価に造詣の深い、教育工学の専門家のアドバイスを受け、内容の充実を図る。
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Research Products
(2 results)