2016 Fiscal Year Annual Research Report
地下氷コア解析によるアラスカ永久凍土域の環境動態解明-氷床コア研究法を応用して-
Project/Area Number |
16H05615
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 浩 北見工業大学, 工学部, 助教 (80634625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 芳徳 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (40370043)
中澤 文男 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (80432178)
堀内 一穂 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (00344614)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気候変動 / 永久凍土 / アイスコア |
Outline of Annual Research Achievements |
当初はアラスカ・ノーススロープ郡Itkillikで地下氷試料を採取する計画であったが,現地の永久凍土露頭が大きく後退したとの情報を受け,急遽予定を変更して,より安全・確実に作業が行えるアラスカ・バローの永久凍土トンネルでサンプリングを行った.水平方向に全長約6メートルの連続地下氷コアを回収し,日本に持ち帰ることに成功した.地下氷コアのサイエンストレンチを行い,氷コアの記載や切り分け作業を行った.氷コアの基礎情報を得るために,水の同位体組成分析(水平方向2.5cm分解能)や放射性炭素年代測定を行ったところ,地下氷は約11500~10000年前(放射性炭素年代)に形成されたもので,ヤンガードライアス(YD)と呼ばれる急激な気候変動イベント(亜氷期)の情報を記録していることが明らかになった. <氷構造解析>地下氷の目視観察を行い,全ての試料が単独のアイスウェッジ(氷楔)システムに由来することが明らかになった. <化学分析>水平方向2.5cm分解能で水溶性イオン濃度分析を行ったところ,YDの時期にCl/Na比が海塩比よりも高くなる傾向が見いだされ,その原因を現在調査中である. <宇宙線生成核種分析>地下氷コアに対する宇宙線生成核種分析を行うための予備実験として,CRREL永久凍土トンネルで採取されたアイスウェッジに含まれるBe同位体を分析した.その結果に基づいて,先行研究に乏しいアイスウェッジのBe同位体分析法を検討した. <花粉ゲノム解析>バロー永久凍土トンネル内で採取された土壌試料には,化石花粉がほとんど見当たらず,試料採取地点の再検討などの課題が残った.その一方で,既存のDNA分析法が,年代の古い花粉にも適用可能か検討するため,氷河氷に含まれる化石花粉を利用して実験をおこなった.その結果,4870年前の化石花粉においても,実験条件の僅かな変更で遺伝情報を取得できることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古環境復元に適した永久凍土地下氷コアを採取することに成功し,氷コア試料の各種分析も順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
・より正確に試料の年代を見積もるために,氷コアに含まれる植物遺体を選別して取り出し,その放射性炭素年代測定を行う. ・氷の形成過程・履歴に関する詳細な情報を得るために,氷結晶組織(結晶粒形・サイズ,結晶軸方位分布,気泡の分布等)の分析を進める. ・化学分析を進め,今回明らかになったYDの時期にCl/Na比が海塩比よりも高くなる原因を探る. ・前年度の予備分析結果に基づき,水平方向2.5cmの分解能で,地下氷コアのBe同位体分析を行う. ・今年度は永久凍土試料の選定をし直し,試料からの化石花粉抽出方法の検討・化石花粉中のDNA残存実験等の予備実験を行い,分析方法を定める.
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Research Products
(2 results)