2016 Fiscal Year Annual Research Report
北東シベリア永久凍土地帯のガス代謝と微生物群集の環境変動に対する応答
Project/Area Number |
16H05618
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村瀬 潤 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30285241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 敦子 北海道大学, 北極域研究センター, 教授 (50235892)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北東シベリア / ガス代謝 / 地球温暖化 / 微生物群集 / 湿地 |
Outline of Annual Research Achievements |
北東シベリア タイガ‐ツンドラ境界域の湿地土壌を対象に、メタン放出の制御要因となるメタン酸化のポテンシャルとそれに及ぼす環境要因の影響を解析するとともに、阻害剤を利用したメタンフラックス測定および溶存メタンの安定同位体比の測定データから現場におけるメタン酸化の程度を検証した。ロシア連邦サハ共和国インディギルカ川流域において夏季のミズゴケおよびスゲ植生湿地帯から採取した土壌は、培養後速やかな高いメタン酸化活性を示した。また、水飽和した無酸素層や凍土層から採取した土壌や低温(0℃)で培養した土壌もメタン酸化活性を示した。土壌表層の間隙水から採取した溶存メタンは、酸化を示す「重い」炭素および水素安定同位体比を示したが、20cm以深ではメタンの酸化は示唆されなかった。メタンフラックスはメタン酸化の特異的阻害剤の影響を受けず、植生を経由した酸素供給とリンクしたメタン酸化は非常に小さいことが示唆された。以上のことから、本湿地土壌は高いメタンメタン酸化ポテンシャルを維持しつつも、現場における実際の酸化量は限定的であると想定された。 メタン酸化に関わる微生物群集の安定同位体プロービング法により解明を試みた。現地で採取した泥炭試料を13C標識したメタンを添加して培養を行ない、培養後の土壌を国内に持ち帰り、DNAの抽出、分画、16SrRNA遺伝子をターゲットとしたPCR-DGGE解析を行った。その結果、メタン由来の13Cを取り込んだ形跡は確認されず、現地での培養が十分な解析感度を有するに至らなかったと判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの成果から、北東シベリアにおけるメタンを中心としたガス代謝の特徴が明らかになりつつあるという点で、当初計画に対する一定の成果が挙がっていると判断される。一方で、13C標識メタンを用いた安定同位体プロービング法によるメタン酸化微生物の特定においては、解析の必須となる超遠心分離機の不具合により、解析の遅れを余儀なくされた。また、現地における1週間の培養では13CのDNAへの十分な取り込みは認められず、現在までに実際にメタン酸化に関わる微生物群集の解明に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
安定同位体プロービング法によるメタン酸化微生物群集の解析については、より感度の高いRNAを対象に引き続き、解析を進める。それでもメタン由来炭素の取り込みが認められなかった場合には、当初研究計画に基づき、国内に持ち帰った土壌試料で再度培養実験を実施する。
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Research Products
(4 results)