2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development for mapping of stable isotopes in precipitation over Indonesia
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16H05619
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
一柳 錦平 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50371737)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インドネシア / 降水同位体 / アイソスケープ |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯域における降水の安定同位体比と降水量や気温など気象要素との関係を明らかにするため,インドネシア気象局に降水のサンプリングを依頼している. これまで2010年から2012年に取得した降水サンプルの解析は,博士課程留学生がインドネシア全域約30地点における降水同位体比の空間分布と季節変動を明らかにした(Belgaman et al., 2017). さらに,本科研費によって2016年から2018年までインドネシア全域約50地点における毎週の降水サンプルを取得した.現在,全部で1,200個を越えるサンプルが熊本大学に届いており,酸素,水素安定同位体比の分析を行っており,約800サンプルの分析を終えている. その他にも,H29年度は代表者が兼任している海洋研究開発機構(JAMSTEC)が主導して,Year of Maritime Continent (YMC)の集中観測がスマトラ島において行われた.そこで,2017年12月から2018年1月において,スマトラ島ベンクル市の降水同位体観測を行い,降水分布や同位体比の日変化を明らかにした(Ichiyanagi et al., in press). モデル研究では,インドネシア周辺域を対象とした同位体領域モデルによって,2010年から2013年までの降水量と同位体比を計算した結果,降水量の再現性はあまり良くないが,同位体比は半数以上の観測地点でよく再現できた.今後は2016年から2018年の観測データも含めてモデルの再現性を評価することと,グリッド内での狭い領域での降水量や同位体比の変動要因を考察する予定である. さらに,タイからの博士課程留学生がタイ全域における降水同位体比データを取得しており,その時空間分布や変動要因の解析を行っている.国際会議で発表するとともに,査読付英語論文を投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
インドネシア気象庁に依頼している降水サンプリングは,H28年度からH30年度にかけて計画通りに進んでおり,全域約50地点の1,200個を超えるサンプルが熊本大学に届いている.現在は,降水サンプルの安定同位体比を分析中であり,すでに約2/3が完了している.また,YMC集中観測の成果はすでに査読付英文誌に印刷中である.このように,インドネシアでの観測計画は当初の計画以上に進展している. また,これまで熊本大学において学位を取得したインドネシア人留学生は母国で政府機関(科学技術応用庁)の研究員となり,H29年度からは研究協力者として本課題に貢献している. さらに今年度は,タイからの留学生がタイ全域の降水同位体比データの解析を行っており,当初の予定よりも熱帯域での観測領域を広げることができた. 以上のように,観測研究の成功や拡大,キャパシティビルディングの観点からも,「当初の計画以上に進展している」と評価できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,H28年度からH30年度において,インドネシア全域約50地点の降水サンプリングを成功させたが,今後も課題終了のH31年度分までサンプリングを継続する予定であり.経年変化についても考察を行う.これら貴重な観測データは,d-excessを用いて蒸発しているサンプルを削除するなどのクオリティチェックを行い,データベースを構築する.また,熱帯域であるタイの降水同位体比データが取得できたため,その時空間変動や変動要因についても合わせて解析する予定である. モデル研究については,同位体領域モデルを使って2013年までの計算が終了しており,同位体比は半数以上の観測地点でよく再現できたが,降水量の再現性はあまり良くない.2018年度のYMC観測により,衛星から推定された降水量と現地観測には差があることが分かったため,モデルのグリッド内という狭い領域での降水量や同位体比の変動を評価する必要があると考えられる.国外での観測は難しいことから,熊本の過去の観測データを利用して解析を行う予定である. さらに,タイの降水同位体比データも利用できるようになったため,アジア熱帯域に観測を拡大する.今後は観測期間の2016年以降もシミュレーションを行い,降水同位体比の変動要因について水蒸気の起源解析も含めて考察する.最終的には,インドネシアを含む熱帯域における降水同位体の推定式を完成させ,観測が無い地点でも同位体比が推定できるようにして,アイソスケープ(同位体地図)を完成させる予定である.
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Research Products
(5 results)