2017 Fiscal Year Annual Research Report
北極ツンドラ生態系における土壌CO2フラックスの冬期の動態解明と年間の高精度推定
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16H05622
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
内田 雅己 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 准教授 (70370096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 正一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主席研究員 (20354128)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 極地 |
Outline of Annual Research Achievements |
7-8月に土壌中の二酸化炭素濃度を測定するためにセンサーを設置しているノルウェー・ニーオルスン(北緯79度)赴き、データロガーからデータを回収した。その結果、いくつかのセンサーに物理的な障害と思われる異常値が示されたが、冬期も含め、通年の土壌ガス中の二酸化炭素濃度の経時変化を捉えることに成功した。二酸化炭素濃度は土壌深度によって変動幅が異なっていたが、その経時変化はほぼシンクロしていた。一方、同じ土壌深度においても場所により土壌二酸化炭素濃度が大きく異なる層も認められた。 土壌温度が氷点下で土壌が凍結している状態にもかかわらず、二酸化炭素濃度が比較的短時間に大きく変動していることも認められたため、冬期、凍結時における土壌表面から放出される二酸化炭素フラックスは生物的要因に加えて物理的な要因も影響している可能性が示唆された。 気象データと照らし合わせた際に、積雪期に降水のある”rain on snow”のイベントが確認された。その際、土壌表層付近の土壌中の二酸化炭素濃度はイベントに連動して変化していることを捉えることに成功した。このことにより、”rain on snow”イベントは冬期の土壌二酸化炭素フラックスに影響を及ぼす可能性が示唆された。夏期は土壌中の二酸化炭素濃度が比較的安定しているため、土壌二酸化炭素濃度、土壌水分、土壌温度および土壌二酸化炭素フラックスデータをもとに、夏期の土壌二酸化炭素フラックスを推定するためのモデル開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、土壌中のガスに含まれる二酸化炭素濃度の通年測定に成功した。さらに冬期、土壌が凍結しているにも関わらず、土壌中の二酸化炭素濃度がダイナミックに変化することや、場所毎に土壌中の二酸化炭素濃度が大きく異なることなど、これまで知られていなかった現象についても明らかにすることができた。さらに、得られたデータから冬期の土壌中の二酸化炭素濃度の挙動を説明するためには生物的要因に加え、非生物的要因も重要である可能性が明らかとなった。冬期の土壌中の二酸化炭素濃度が予想を超えて大きく変動していたことから、冬期の土壌二酸化炭素フラックスを推定するためのモデル開発の前に、比較的濃度が安定している夏期のデータを元に土壌二酸化炭素フラックスを推定するためのモデル開発に着手する方針を決定することができた。さらに、室内実験により、凍結状態の土壌からの二酸化炭素放出のフラックスの動態を調査する必要性も明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も夏期に現地に赴き、メンテナンスおよびバッテリーの交換を実施する。また、二酸化炭素濃度測定が不調なセンサーは新規に開発されたセンサーに更新することにより、二酸化炭素濃度測定が可能になると見込んでいる。また、冬期の土壌二酸化炭素濃度が想定以上に高濃度になる土壌深度のセンサーについては、新たに高濃度測定用の二酸化炭素センサーを埋設し、高濃度でも測定可能になるようにする。全ての二酸化炭素センサーは埋設後、キャリブレーションを実施し、年間の二酸化炭素濃度の補正に使用する。
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