2016 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における風土建築の維持継承可能性に関する多面的評価
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16H05630
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 広英 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (70346097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
伊庭 千恵美 京都大学, 工学研究科, 助教 (10462342)
吉積 巳貴 京都大学, 森里海連環学教育ユニット, 特定准教授 (30423023)
清水 貴夫 広島大学, 教育開発国際協力研究センター, 研究員 (10636517)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 風土建築 / 維持継承 / 文化的価値 / 機能的価値 / 環境的価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】 本調査研究は、近年の市場経済や外的価値の浸透によって消滅しつつある地域固有の建築文化の維持継承可能性を検証するものである。以前に風土建築の再建プロジェクトをおこなったベトナム、フィジー、タイの集落を中心にフィールド調査を実施し、①文化的要素(自文化影響力)、②機能的要素(建物活用用途)、③環境的要素(居住環境性能)の評価軸のもと、現代社会における風土に根ざした建築の存在意義や有意的要素を考察する。ここで得られる知見は、グローバル化が進む現代社会において地域固有の建築文化のあり方を示すだけでなく、日本を含むアジア木造建築文化の発展的継承に資する、学術的かつ実践的に有意義な研究となる。 【研究実績の概要】 本調査研究の目的である地域固有の建築文化の維持継承可能性を検証する評価軸、①文化的要素(自文化影響力)、②機能的要素(建物活用用途)、③環境的要素(居住環境性能)に関して、今年度の調査対象地であるベトナム、フィジーにおいて、各々具体的な研究課題を設定し調査を実施した。①と②ではベトナム中部・ホンハ村における少数民族カトゥ族の伝統的集会施設の利用状況調査と観光資源利用の可能性を議論した国際会議発表1報(2016年11月)、フィジー・ナバラ村における伝統住居のサイクロン被害と再建に関する国内会議発表2報(2017年9月発表予定、論文提出済)、③ではベトナム中部・ホンハ村における少数民族カトゥ族の伝統的集会施設、及び集落住居の温熱環境調査に関する国内会議発表2報(2017年6月、9月発表予定、論文提出済)にまとめている。また、本調査研究の内容や進捗について共同研究者や研究協力者、関連の研究者・専門家との定期的な意見交換・情報共有を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査研究は、フィールド調査を年2回のサイクルで3年間実施し計6回、3地域(ベトナム、フィジー、タイ)を2回ずつ滞在し調査活動をおこなう。主な研究の進展は以下の通りである。 ベトナム1回目調査(再建建築の維持継承可能性調査):ベトナム中部フエ省アルイ県ホンハ村で建設された山岳少数民族カトゥ族の伝統的集会施設・グゥールのコミュニティ共同活用や維持管理の状況、新たに計画されるエコツーリズムの宿泊施設利用について聞き取り調査を実施した。また、風土建築の居住環境性能を明らかにするために、ホンハ村の伝統的集会施設とナムドン県ソンクァン村にあるコンクリート構造トタン屋根の擬似伝統的集会施設を比較しながら、屋内外に温湿度等の計測機器を設置し、地域住民の温熱感覚について調査を行った。その調査結果をもとに伝統的集会施設の温熱環境のシミュレーション解析を行った。 フィジー1回目調査(再建建築の維持継承可能性調査):フィジーの主要島であるビチレブ島の首都スバ近郊に位置するザウタタ村、及び島内中央山岳部に位置するナバラ村でフィールド調査を実施した。フィジー伝統住居・ブレが数多く残るナバラ村では、2016年2月に発生した巨大サイクロンの住居被害と復興状況について調査し、伝統住居の耐災害性能(機能的要素)や再建能力(文化的価値)に関して実測調査及び聞き取り調査を実施した。ここでも風土建築の居住環境性能を明らかにするために、ナバラ村の草葺き伝統住居とトタン屋根現代住居、ザウタタ村の現代住居に屋内外の温湿度等の計測機器を設置し、地域住民の温熱感覚について調査を行った。また両村の気候特性を把握するために雨量・温湿度・風向を測定するウェザーステーションを設置し、次年度以降のデータ取得の準備をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はフィジーに来襲したサイクロンによる伝統建築の被害・再建に関する調査継続の必要性から、フィジーで2回目のフィールド調査を実施する。また、タイでは1回目の調査としていくつかのモクレン族集落を訪問・選定し、ウェザーステーション、室内温湿度計の設置や、伝統建築の建設・維持に関するインタビュー調査、アンケート調査を実施する。また、それぞれの地域における建物の物理環境計測値のデータ回収と調査結果の分析を行い、それらの温熱環境のシミュレーション解析を行う。昨年度実施したベトナムでのフィールド調査は、調査協力者に設置機器からのデータ採取等を依頼する。フィジー、タイでのフィールド調査内容は以下の通りである。 フィジー第2回フィールド調査:昨年度のフィールド調査で、フィジー適正技術開発センター内、及びザウタタ村で建設された伝統住居・ブレは常時利用されていないため、生活環境をふまえた環境測定や聞き取り調査を実施すべく、伝統住居の多く残るナバラ村を中心に調査を実施する。ここでは、2016年3月にサイクロン被害を受けており、その再建過程の調査により、住居の耐災害性や観光資源に関連する機能的要素、伝統住居再建と維持に関連する文化的要素について継続的に調査を進める。また、昨年度の第1回目フィールド調査で設置した環境計測機器のデータを取得するとともに住居環境の体感調査をおこなう。 タイ第1回フィールド調査:タイ南部のモクレン族居住地域で、伝統建築の再建プロジェクトと実施したタップラー村を含む集落の広域踏査を実施し、伝統建築の文化的・機能的・環境的要素に関する予備的調査をおこなう。その内の適当な集落において、環境計測機器の設置をおこなう。
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Research Products
(2 results)