2016 Fiscal Year Annual Research Report
中国の土壌汚染における環境リスク低減と持続的資源回復の実現に関する研究
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16H05633
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Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
王 効挙 埼玉県環境科学国際センター, 自然環境担当, 主任研究員 (20415392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米持 真一 埼玉県環境科学国際センター, 大気環境担当, 主任研究員 (90415373)
米倉 哲志 埼玉県環境科学国際センター, 自然環境担当, 専門研究員 (40425658)
磯部 友護 埼玉県環境科学国際センター, 資源循環・廃棄物担当, 専門研究員 (50415387)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌汚染 / 修復技術 / 環境リスク / 環境材料 / バイオマス / 国際協力 / 環境教育 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌汚染は数多くの国で深刻化・顕在化しており、食糧の汚染、土壌資源の喪失、生態系の悪化、人の健康被害等様々な環境リスクを高めることから、低コストで環境に優しい修復技術の開発と普及が喫緊の課題となっている。本研究では、申請者らが構築した、土壌の機能を破壊せず、コストも発生しない「有用な資源植物を用いた収益型汚染土壌修復技術」の普及に向けて、土壌汚染が深刻化している中国の多様な汚染サイトでの実証試験を実施し、環境教育等で活用できる実用事例集を作成することにより、土壌環境保全及び環境リスクの低減に貢献することを目的としている。今年度は、中原地域(山西省・山東省)、東南部地域(上海市・湖南省)、東北部地域(吉林省)において基礎調査及び実証試験を実施した。 中国の農地の環境基準を上回る土壌中のCuの平均濃度である583mg/kgを記録した中原地域の山西省圃場において行なった実証試験では、修復に用いたバイオ燃料に利用できる資源植物であるトウモロコシの総収量は34.6t/ha、実の収量は9.7t/haであった。粗収益は28万円/haで、修復能力は674g Cu/haであった。また、東南部地域では、マリーゴールドとトウゴマで収益性や修復性も高かった。胡南省の対象地域の基礎調査を行ったところ、土壌と米中の重金属Cdの含有量は中国の基準を大幅に超過していた。東北地域のニッケル汚染地においては、トウモロコシの収穫量、修復能力、収益性が高く評価された。 今年度の研究結果から植物のバイオマス量、実の収穫量、収益性、修復能力は資源植物の種類や実施地域により大きな差があったが、各地域の気候などに適した資源植物を用いることにより土壌の修復効果と収益効果が得られると考えられた。さらに、現地大学と連携して農家への啓発活動の実施により、「有用な資源植物を用いた収益型汚染土壌修復技術」への理解と普及を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)計画していた中国での汚染地の調査と汚染状況の解明、代表的地域の汚染サイトの確保及び現地共同研究者との連携、現場試験実施の準備、各代表地域の資源植物の選定と栽培、現地大学の環境教育などについて、概ねに計画通りに進んでいた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、主に中国代表的現地モデル試験の実施、試験地の調査、修復効果及び収益性の評価、リスクの低減の評価、実用事例集の作成の準備、環境教育の実施により「有用な資源植物を用いた収益型汚染土壌修復技術」の普及を推進する。具体的計画は以下の通りである。 ①調査研究実施国・地域:(1)実施国:中国(2)地域:予定された中国の代表的三つの地域:東南地域(上海市、湖南省)、中原地域(山西省、山東省)、東北地域(吉林省)。② 各地域における汚染土壌修復モデル圃場の実証試験の実施(時間:4月~6月。担当:王、米倉、米持、中国の各地域の研究協力者・現地大学の大学生等)。 ③ 中間調査と確認(時期:7月~8月;担当:王、米持、米倉、磯部、中国の各地域の研究協力者・現地大学の大学生等):主に植物の生長状況と管理に関する確認と情報の収集。④ 試験地の資源植物の収穫、試料採取と調査(時間:9月~11月;担当:全員)。⑤ 試料の測定(時期:12月~2月;担当:王、米持、米倉、中国の研究協力者)。⑥ データの解析と効果の評価(時期:2月~3月;担当:全員):(1)植物の収量等のデータの集計による資源植物の収量の解明;(2)汚染物質の植物体内の分布特徴、修復効果、修復機構と収益性の解明。⑦ 環境教育の実施(時間:通年;担当:全員):現地大学の大学生を対象として日本側の研究者と科学普及セミナー等により、土壌保全と汚染土壌の対策に関する環境教育と国際交流を促進する。⑧ 収益型の汚染土壌修復事例集の作成の準備(時期:12月~3月;担当:全員):データの総合解析と修復効果、収益効果などにより、収益型の汚染土壌修復事例集の作成を準備する。⑨ 研究結果のまとめ(時期:2月~3月;担当:全員)。⑩ 成果発表(時期:通年;担当:全員):研究成果の公表は積極的に実施する。
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Remarks |
埼玉県環境科学国際センター報、ニュースレター等
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