2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05638
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
坂本 昭二 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60600476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 至弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (30127063)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 製紙技法 / 澱粉 / 繊維 / 紙 / 古文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国で発明された製紙技法の東西伝播を調査するにあたって、平成28年度は製紙技法の東への伝播について重点的に研究を行った。まず、紙繊維の分析ではこれまでに調査を行った4世紀から11世紀までの敦煌、トルファン、楼蘭文書の結果に続くものとして、宋版や元版と見られる文書の紙の分析を行った。この結果、宋版や元版に使用された紙は、敦煌、トルファン、楼蘭文書からは見つからなかった竹の繊維を原料とした紙であった。一方で製紙技法が中国から伝わった韓国や日本の古文書料紙から竹紙は見つからず、そのような報告もない。韓国や日本の古文書の紙の多くが楮紙で、一部に麻紙や雁皮紙の使用が見られた。したがって、中国では遅くとも宋代には竹紙が一般的に作られていたが、竹紙の製作技法は韓国や日本に伝わらなかったか、または、定着しなかったことを示すことができた。次に、紙の填料の分析については、日本では鎌倉時代の紙に米粉の使用が報告されているが、実際に鎌倉前期の嘉禄版の紙から米デンプン粒を大量に見つけている。一方、敦煌文書でのデンプン粒の調査でも隋代、初唐、盛唐時代の一部の文書から米や粟のデンプン粒と見られる粒状物が見つかった。さらに、中唐時代以降の一部の敦煌文書の紙からは小麦のデンプン粒と見られる粒状物が見つかった。この結果から、少なくとも日本でのデンプン使用より以前に中国でもデンプン粒が填料として使用されていたことを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は製紙技法の東伝について重点的に研究を行ったが、中国、韓国、日本各国の古文書の紙を分析することができ、材料である紙繊維や填料として使用された澱粉に関する成果を得ることができた。これらの成果の一部を平成28年度中に論文や学会発表を行ったが、平成29年度にも引き続き成果を発表する予定である。また、紙の西伝について調査するために平成28年度9月に予定通り研究拠点をパリのCentre de Recherche sur la Conservationに移した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究拠点をヨーロッパに移したので、予定通りアラブやヨーロッパの紙についての分析を重点的に行う予定である。文献資料による紙の西伝や製紙技法に関する調査を進めながら、アラブやヨーロッパの古い紙についての分析を進める予定である。平成29年度はケンブリッジ大学図書館が所蔵するアラブ世界の古文書コレクションであるゲニザ文書の分析をデジタル顕微鏡を持ち込んで行う予定である。
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Research Products
(7 results)