2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05638
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
坂本 昭二 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60600476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 至弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (30127063)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 紙分析 / 敦煌文書 / ゲニザ文書 / レンブラント / ラグペーパー / 製紙技法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度からはこれまでに調査してきた東アジアの古い紙からシフトして主に中央アジア、中東地域の古い紙を調査し、製紙技法の西方への伝播の実態についての調査を重点的に行った。まず、ペリオコレクション(フランス国立図書館所蔵)とスタインコレクション(大英図書館所蔵)の敦煌文書の中に麻質のボロ布や糸屑が混ざっているラグペーパーがあることを明らかにし、記年の情報などからラグペーパーの作成されていた時代(北魏時代または中唐時代以降)も明らかにした。次に、英国のケンブリッジ大学図書館が所蔵するゲニザ文書(カイロで出土した主にヘブライ語で書かれた文書群。この中には東はイランから西はスペインまで様々な場所で書かれた文書が含まれている。)を分析し、10世紀から11世紀頃のいくつかの文書の紙の中に糸屑(亜麻または大麻の糸と思われる。)が混入していることを確認し、製紙材料にボロ布や糸屑などのラグを使用していた明らかな証拠を示すことができた。 さらに、文書ではないがフランス国立図書館とクストディア財団が所蔵するレンブラント・ファン・レイン(1606-1669)の銅版画作品などに使われた紙の分析も行った。これまでに行われたレンブラントの銅版画の紙の分析は限定的なものにとどまっているが、今回の調査ではこれまでのところ77点の作品を分析している。この結果、洋紙の他に雁皮紙や竹紙が使われていることを確認した。歴史史料の調査の結果、雁皮紙や竹紙は17世紀にオランダ東インド会社によって日本や中国からアムステルダムに持ち込まれたものである可能性が高いことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では中東やヨーロッパの古い紙について重点的に分析を行う予定であった。ゲニザ文書群の分析ではイラン、ティルス(レバノン)、バグダッド(イラク)、ダマスカス(シリア)、カイロ(エジプト)、チュニジア、スペインなどで書写された10世紀から11世紀頃の紙を分析した。これらのほとんどが亜麻(または大麻)繊維で作られた紙であったが、当時からボロ布などを原料にして紙を作っていたことを明らかにすることができ、当初の計画通り中東地域の古い紙の分析することができた。ヨーロッパの古い紙は平成30年度初頭にシャルトル大聖堂所蔵の14世紀頃の紙を分析する予定である。 さらに、当初の予定にはなかったが、レンブラントの銅版画作品などに使われている紙の分析を行った。以前から和紙の使用が指摘されていたが、デジタル顕微鏡を用いた非破壊分析によって、雁皮紙、竹紙、洋紙に正確に分類できた。これによって、従来の目視による紙の分類には間違いがあることも明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は引き続いて中東やヨーロッパの古い紙を重点的に調査していく予定である。ヨーロッパの古い紙の分析ではフランスのシャルトル大聖堂が所蔵する14世紀頃の文書の紙を分析する予定である。また、引き続いてレンブラント作品に使われている紙の分析も進めていく予定である。 最終年度(平成31年度)のデータベース公開に向けてのデータベースの開発とデータ準備も行っていく予定である。
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