2017 Fiscal Year Annual Research Report
噴火が迫るタールおよびマヨン火山のマグマ・熱水システムの解明
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16H05651
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
長尾 年恭 東海大学, 海洋研究所, 教授 (20183890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 博之 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10343758)
楠本 成寿 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (50338761)
大場 武 東海大学, 理学部, 教授 (60203915)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タール火山 / マヨン火山 / 地震 / 重力 / 火山ガス / 電磁気 / 噴火予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度には、延8名が本科研費によりフィリピンへ渡航した。具体的には29年9月に地磁気観測点の整備、繰り返し磁気測量、火山ガスの採取等を実施した。30年1月にはPHIVOLCSにおいて、重力データ解析に関する集中講義セミナーを行ない、解析技術の移転を行った。30年2月には地震解析ソフトウエアのアップデートおよびデータ転送システムの保守作業を実施した。さらに30年3月に火山ガスの採取をタール火山で実施した。 30年1月の訪問時にはマヨンの噴火が開始し、日本が本科学研究費採択の前に実施していたSATREPSで整備したGNSS地殻変動データに典型的な山体の膨張が捉えられていた。 地震学的な進展としては、火山においては流体の移動を伴う火山活動によって短波長の散乱特性が変化しやすい。高周波地震波はこのような短波長の構造変化に影響されやすいため、高周波の地震波形を解析し散乱構造の推定をタール火山で初めて試みた。その結果、タール火山の散乱特性が時間的にも空間的にも一様ではないことを示唆する結果が得られた。 火山ガス(噴気)の採取分析は昨年度を含め28年9月、29年3月、9月、30年3月に実施した。これまでの所、火山ガス測定から窒素とヘリウムの比は典型的な沈み込み帯の火山に特有な値である事が分かった。また硫化水素の濃度が増加する傾向のある事が判明した。 タール、中央火口湖(MCL)の内外に分布する4か所の噴気(a:北山麓,c:MCL北岸,d:MCL北東岸,e:MCL南西岸)を繰り返し採取・分析したが、噴気の化学組成ではaとcで29年3月にS/H2O比が顕著に上昇する共通の変化が見られた。He-N2-Ar三成分ではa,c,dが同一の高いN2/Heを持つ端成分の寄与が見られたがeだけは端成分のN2/He比が低かった。このためa,c,dのグループとeは成因が異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データのテレメータ装置がバッテリーの消耗等の理由により、欠測の生じる事があったが、それ以外は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
タール火山はdecade volcanoと呼ばれる位、過去の噴火活動は激しかった。ところが現在異例とも思える長期間の噴火休止期間(40年以上)が継続している。この原因の一つが火山島直下の構造に起因していると考えられている。 本研究を遂行する事により、地震学的・地球電磁気学的・地球化学的・測地学的な観測結果に矛盾しないモデルの構築が可能となり、火山島直下の構造を明らかにする事により、将来の噴火可能性に関する情報を得る事が期待され、減災に資する事を目的としていきたい。またマヨン火山についても、地震学的な研究を進め、マグマだまりの詳細な大きさと位置の把握を予定している。
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Research Products
(9 results)