2017 Fiscal Year Annual Research Report
ニカラグア考古学調査と博物館づくりを通した地域の持続的開発と発展に向けた研究
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16H05665
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
南 博史 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (00124321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嘉幡 茂 京都外国語大学, 京都ラテンアメリカ研究所, 客員研究員 (60585066)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 先住民集落研究 / 文化財ガバナンス / フィールドミュージアム / ニカラグア先住民文化 / 持続可能なコミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、ニカラグア・マティグアス郡のティエラブランカ地区ラスベガス遺跡の学術的重要性を明らかにした上で、遺跡のあるキラグア山系西麓地域をフィールドミュージアムと見立て、多様な文化財の博物館的活用を通して、当該地域が慢性的に抱える貧困、教育問題の解決と持続的な開発と発展を可能とする具体的方法を地域住民と協働し見つけることにある。本年は、計画どおり第3次(8月18日~9月16日)、第4次(2月18日~3月22日)の現地調査を実施し以下の成果を得た。 1.考古学調査:(1)マウンド1の発掘調査を継続し主体部を確認した。(2)マナグアの国立自治大学考古学情報機関にて石器・土器の分析を開始した。なお、日本私立学校・共済事業団平成29年度学術研究振興資金(以降、事業団)によるカリブ海側の考古資料調査と連携した。 2.地域交流活動:(1)キラグア山系西麓に広がる先住民文化に関する情報収集を行うため、2地区10のコミュニティから各1名の地域交流活動担当者を選出し文化財連絡協議会を作った。(2)コミュニティミュージアム建設に向けてティエラブランカ村小学校、マティグアス市内にて交流活動を行った。 3.調査評価と課題:調査状況について現地報告会と地域博物館に関する勉強会を実施した(9月3日、3月12日)。 4.成果報告:(1)平成28年度調査概要報告書を作成。(2)事業団による調査と連携し調査報告会を開催(12月25日:京都外国語大学)。(3)コミュニティ・エンゲージメント学会2019(9月25日:京都外国語大学)、Social Sciences and Humanities Research Council Conference(11月8日~12日:カナダ・カルガリー大学)など国内外の学会で発表した。(4)国際文化資料館HP、ブログから随時情報発信を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.考古学調査:マウンド1の建築時期に向けた調査、測量の結果を確認する調査、マウンド1の主体部調査、いずれも少し遅れている。しかし、この遅れは地域住民への丁寧な説明を続けていることの影響もある。一方、予定どおり出土遺物の分析を開始し、すでに成果を現地研究者に報告し始めている。 2.地域交流活動:フィールドミュージアムづくりに向けた調査もほぼ順調に進んでいる。とくに調査目的のために重要なステップであったキラグア山系西麓に広がる先住民文化に関する情報収集を行う文化財連絡協議会を予定通りスタートすることができた。また、そのコア施設になるコミュニティミュージアムの建設に向けた地域住民との意見交流も進んでいる。今年度も2回のワークショップを開催したが住民の意見がより具体的なものになっており、研究の成果が表れ始めている。また、学校教員向けのプロジェクト説明会などマティグアス市内での普及活動も引き続き進めている。一方、地域住民主体による地域資源活用に向けた社会実験、「地域資源・文化財マップ」づくりは来期へ継続にした。これについても地域に寄り添いながら調査を進めるという立場からの判断である。 3.成果報告:調査概要報告書、内外の国際学会での発表(口頭、ポスター)も継続的計画的に進めている。また、普及活動としてはとくにブログの更新も順調である。一方、国際文化資料館(以降、資料館)での速報展の開催については、資料館のスケジュールの関係もあって今期は実施できなかった。 以上のようなことから、調査はほぼ順調に進んでいると評価した。これは国際共同研究としてニカラグア国立自治大学考古学情報機関、マタガルパのNGO組織ANIDESをパートナーに、マティグアス市、ティエラブランカ村地域住民、地主らと協働し「地域に寄り添いながら調査を進める」体制、信頼関係が築かれているからであると自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.考古学研究:マウンド1主体部の調査を終了させ、建設時期を明らかにするため床面の確認調査を行うとともに、C14年代測定を実施する。また、将来のマウンド(一部修復)公開に向けた準備を開始する。さらに測量調査を踏まえた集落構造に関する調査を継続し、集落全体を対象とした考古学調査にむけた中長期計画をつくる。出土遺物の整理・分析をすすめ、編年的位置についても明らかにしていく。そして、調査報告書作成に向けて準備を始める。 ニカラグアでは初めてといえる今回の考古学的成果およびその学術的重要性をさらに中米全体の考古学研究に位置付けるため、カリブ海とメキシコ湾を含めた「アメリカ地中海地域」の総合的学術研究へと展開していきたいと考えている。これによって中間領域とよばれている当該地域と古代メソアメリカ文明、古代アンデス文明との社会的文化的経済的位置関係を明らかにできると考えている。 2.地域開発研究:フィールドミュージアムづくりについては、今期にできなかった「地域資源・文化財マップ」づくりを行い、地域住民主体による地域資源活用に向けた社会実験に備える。また、コア施設になるコミュニティミュージアム建築が2019年から開始されることになっており(マティグアス市主体)、それに向けて建物建築図面の作成、博物館施設の設計などの作業を行う。これはパートナーであるニカラグア国立自治大学建築学科および京都外国語大学学芸員資格課程の学生が担当することになる。 こうした成果を踏まえて、地域全体をミュージアムとして捉え、地域住民を主体とした文化財ガバナンス体制と、地域課題解決にむけた実践的研究をさらに進めていきたいと考えている。また、このフィールドミュージアム活動を「地域住民が主体となって進める地域文化の再発見と再開発による持続可能な地域社会の発展モデル」として中米全体へ広げていく研究に繋げる。
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Research Products
(11 results)