2017 Fiscal Year Annual Research Report
南米日系社会における複言語話者の日本語使用特性の研究
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16H05676
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松田 真希子 金沢大学, 国際機構, 准教授 (10361932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Daniel Long 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (00247884)
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20347785)
渡部 倫子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (30379870)
森 篤嗣 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (30407209)
山本 和英 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (40359708)
宮崎 幸江 上智大学短期大学部, 英語科, 教授 (60442125)
小林 ミナ 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (70252286)
久野 マリ子 國學院大學, 文学部, 教授 (90170018)
中井 精一 富山大学, 人文学部, 教授 (90303198)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 加算的バイリンガル / 複言語・複文化 / 南米日系人 / 言語混交 / 方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)南米日系CLD児童の複言語能力に関する調査研究 ブラジル8地点、パラグアイ5地点、ボリビア2地点、アルゼンチン1地点でCLD児童の日本語教育環境調査を行い、そのうち約100名に対してDLA(文部科学省2014)による日本語能力横断調査を行なった。パラグアイではスペイン語能力調査も合わせて行なった。その結果、日本語との接触場面が豊富に残る地域にあり、学習時間が長い南米日系日本語学校で学ぶ児童生徒は、加算的バイリンガルが育つ傾向にあった。また、日本で育った帰国児の日本語力保持・伸長についても、学校の立地やカリキュラムに影響を受けることが明らかになった。日本在住の日本生まれの日系CLD児童にダブルリミテッド状況が多数見られることから、在南米日系CLD児童生徒に対する言語教育実践から、複言語・複文化話者として育つために必要な環境整備への示唆が得られる可能性がある。 (2)南米日系成人の複言語能力に関する調査研究 ブラジル、パラグアイ、ボリビアの日系人移住地を訪問し、1世から3世の約30名に対して複言語能力に関する調査(自由会話、設定課題発話、言語生活調査)を行なった。調査の結果、南米の各地で、海外日系人の移住地の中でも高い日本語力を保持した複言語使用者が多く存在していることが確認された。特に3世以降でも優れた日本語複言語話者が多く存在していたこと、パラグアイ国境付近の日系人は4言語使用者も見られたこと、ボリビアの日系2世同士の自由会話では日本語とスペイン語、九州の方言の言語混交が起こっていたことなど、日系人の生活する社会や場面に応じた言語使用の多様性が確認された。 今後、南米日系人の言語使用状況を使用者とその社会の中に関連付け、ことばの動態性、連続性、普遍性について分析する予定である。それにより、所与のものとして区切られた日本語や外国語の研究に新たな示唆を提供できると予想する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に南米において必要な海外学術調査をほぼ行うことができたため。特にCLD児童の複言語能力に関する横断調査の日本語に関する調査はほぼ完了した。いくつか調査に行くことができなかった地域もあったが、他の地域を調査することで代用することができた。また日本語以外の言語能力調査もまだいくつか残っているため引き続き継続したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は収集した日系人の言語データの文字化、コーパス化を完了し、言語分析を行なうこと、 CLD児童の2回目の縦断調査を行うことを予定している。また言語教育政策に関する分析も並行して行う。
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Research Products
(18 results)