2016 Fiscal Year Annual Research Report
王家の谷の王墓に記された「天井碑文」の画像史料化と公開に向けた調査研究
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16H05680
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
菊地 敬夫 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (10367112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真知子 東京工芸大学, 工学部, 教授 (30226005)
犬井 正男 東京工芸大学, 工学部, 名誉教授 (50125902)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エジプト学 / エジプト考古学 / 画像工学 / 王家の谷 / 史料編纂 |
Outline of Annual Research Achievements |
王家の谷の王墓に施された「天井碑文」の史料化にむけて、デジタル記録の方法について具体化していった。記録対象としたのは、セティ1世王墓のC室天井にある資料、並びにトトメス3世王墓の埋葬室Jの角柱に記された資料である。後者は、天井に施されたものではないため、通常の撮影方法で記録することとした。 天井に施された記録対象について、出版情報に基づいて記録方法を検討した。対象にはLED照明を当てることとし、機材を開発した。光源を小さなLED電球として約70cmのスティックに埋め込み、そのスティックを撮影対象の直下の床に配置する。この方法では光源が多数に分かれて撮影機材等の影が生じず、記録対象の明暗を一定に保つことに優れている。また作業の効率化を図るために、カメラと天井面の位置関係を計測する機材としてキネクトを利用することで、天井面の測量作業を簡略にする。さらに5060万画素の一眼レフカメラを撮影機材として導入した。記録対象を分割して撮影する際の画角を広くすることができ、分割撮影の回数を減らすことができる。 2017年1月には、セティ1世王墓内の撮影環境を一部確認することができた。天井碑文の位置するC室には、中央に手すりを備えた階段があり、カメラは手すりの映り込みがないようにすえなければならないことが判明した。現地調査は、2017年2月から3月にかけて実施した。トトメス3世王墓での記録作業は計画通りに遂行することができた。またセティ1世王墓の天井碑文の記録も、上述した予想外の撮影環境に対応して、広角レンズを利用して撮影を行った。次年度以降、記録したデジタル画像を画像工学的に処理して、撮影方法の改善につなげたい。ただし、これまでは撮影方法の確立といった考えを重視していたが、むしろ多様な撮影環境に対応できる撮影手法を用意することの重要性が明らかになった現地調査でもあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、計画通りに現地調査を実施することができた。また、天井碑文という天井に施された記録対象をデジタル撮影するために、その手法を具体化することができた。とりわけ、これまでは撮影記録の方法を確立することを目指していたが、今年度の研究を通して、手法にかかわる一定の基盤を得ることができた。さらに、今後は、その撮影手法の基盤を、個々の記録対象で異なる作業環境に適応させていくことが課題として明確になったことも評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず、初年度の現地調査で得られたデジタル画像を史料化にむけて加工することに取り組む。現地で得られた測量データを用いて、セティ1世王墓の天井碑文を1つの大画像とする手法を検証する。そこから、現地での撮影記録手法の改善点の有無を確認したい。その結果によっては、再度、セティ1世王墓で対象資料を撮影することも選択肢として考えている。この点も考慮しつつ、年度の後半に実施する現地調査では、2ないし3基の王墓で天井碑文のデジタル記録を行う予定である。
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