2017 Fiscal Year Annual Research Report
A practice of skyscape archaeology in Micronesia
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16H05684
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
後藤 明 南山大学, 人文学部, 教授 (40205589)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / 民族学 / 天文学 / オセアニア / ミクロネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はミクロネシア連邦ポーンペイ島にてスカイスケープ考古学的な調査を行った。まず太平洋で最大級の遺跡であるナンマタールの調査を行った。手法はGPSを用いて真北ベースの測量を遺構の壁や墓について行った。 まず主要遺構で王墓と考えられるナンドワスの内壁お外壁および水路を隔てて設置されている防波堤について方位測量を行った。その結果この遺構はほぼ東西南北を基本に造られていることを確認した。真北ベースの方位とのずれはせいぜい2,3°程度であった。 次に主要な墓地遺構である東部地区のカリアン、また西部地区で王宮があったとされるパーンカディラそしてそれに隣接する最も重要な儀礼が行われたとされるイドゥヘにおいて測量を行った。パーンカディラでは王宮とも考えられる Nankieilmwahu Templeの方位を計測した。 その結果カリアン、パーカディラの王宮およびイドゥヘという異なった遺構において、建築の基本軸が 57.6から60°という共通性を持っていることが判明した。もしこれが何らかの天体と関係するならもっとも可能性のあるのは双子座であった。双子座はミクロネシアの多くの島で航海や方位の指標とされる星座ではあるが、暦の指標あるいは建築の指標とされるかどうかは不確定である。 ミクロネシアで雨季と乾季の区分をするのに重要であるプレアデスの出現方位はこの軸とずれるが、出現方位を地平線(水平線)ではなく、ある一定の高度に達した時を目印にするのであれば、上記の建築基本軸に若干近くなることを指摘した。 さらに各村にある「季節を変える石」という情報を得て、3つの村落でその石を実見した。この石は雨季(豊穣の季節)を到来を示す指標ということである。詳細な情報は得ることができなかったが、かつて神官などが風向きや特定の天体の出現を見て、この石を反転させて、季節を交替させるという情報も得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は計画していたポーンペイ島において上記のように計画通り調査を挙行した。 ポーンペイ島のナンマタール遺跡の最大遺構ナンドゥワスでは真北ベースでほぼ東西南北の方位を持っていることを確認できた。またそれ意外のカリアン、パーケンディラおよびイドゥヘという異なった人工島に存在し、互いに目視できるわけではない遺構の間でも、基本的な建築方位が共通していることを発見した。 これが従来いわれている隣接するチェムエン島の海岸線に沿ったものなのか、それとも何か意味合ある方位(たとえば天体との関係)なのかを引き続き検討する必要がある。 そのために島内の遺跡や関連する遺跡であるコスラエ島のレルにおいて建築の基本方位の確認などをする必要がある。 しかし予備調査で行く予定だったコスラエ島は航空会社の問題で行くことができなかったが、平成30年度は当初の計画どおり調査に赴く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はキリバス諸島、平成29年度はポーンペイ島で行ってきたGPSによる調査方法を、過去2年間の経験をもとに改良してより迅速な調査が可能な調査を目指す。28年度のキリバス・アロラエ島は開けた海岸であったが、29年のポーンペイ島のナンマタール遺跡は熱帯性植生の濃い遺跡で、測量は困難を極めた。その問題点や対応法については平成29年の調査で実地に検討できたので、30年度はその経験を活かして、同じような環境条件のコスラエ島レル遺跡では、より迅速で正確な測量を行いたい。
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Research Products
(11 results)