2018 Fiscal Year Annual Research Report
A practice of skyscape archaeology in Micronesia
Project/Area Number |
16H05684
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
後藤 明 南山大学, 人文学部, 教授 (40205589)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / 人類学 / 民族学 / 天文学 / ミクロネシア / ヤップ / ポリネシア / クック |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はヤップ島において調査を行った。2018年度当初は2017年度のポーンペイ島ナンマタール遺跡の原型ともいえるコスラエ島レル遺跡の調査を予定し、航空機やホテルなどの手配を行っていたが、現地のコスラエ州文化財局の関係者がみな不在であり、対応できないことがわかり最終的には調査地を2019年度行く予定だったヤップに変更した。 2018年のヤップ島の研究では地表面で観察できる石組み遺構のGPS測量によって平面線型を確認し、それと真北を基本とした方位を確認する。次にその遺構において天体を観察する可能性のある視線のベクトルをできるだけ網羅するため、壁の方位、入り口、石塚、周囲の自然岩などの組み合わせを確認する。さらに推測される遺跡の年代における天体の動きを、天文学者の協力で歳差運動を考慮して推測するための基礎的なデータを作った。 とくにヤップ島は村のセツルメントパタンや儀礼的な踊り場であるmalalの調査が従来主であった。一方タブー地とされるtaliiw (or teliu)の本格的な調査は少なかったが、2018年は文化財局を通して各村の関係者に接触をしていただいたために、3カ所のtaliiwの調査を行うことができた。そのうち二カ所は神話で語られる、最初に設置されたもっとも由緒ある7つのtaliiwのうちの二つであった。 さらに2019年3月には研究旅費の残高を利用し、ミクロネシアの調査と連動して今後調査を進めていきたいと考えている中央ポリネシアのクック諸島、ラロトンガ島とアイツタキ島の予備調査を行うことができた。その中でクック諸島からニュージーランドへポリネシア(マオリ)人が移住するときの目印にしたコンパスストーンなどを実見し方位の確認などを行うことができた。またマラエ(神殿)も数カ所、現地の方と踏査することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
過去三年間、ほぼ計画通りミクロネシアの各島での調査を行ってきている。2016年度はキリバス・アロラエ島の航海石、2017年はポーンペイ島のナンマタル遺跡のGPS測量調査を行った。2018年は年度当初のコスラエ島調査の計画を、現地の文化財保存局係担当者不在という理由で変更したが、ヤップ島における聖地の調査を行うことができた。 2019年度は2018年度にやり残したコスラエ島のレル遺跡を調査する予定である。現在、現地の文化財保存局担当者がポロポーザルの審査、また飛行機のスケジュールなどを確認、班員の予定などを調整中である。 さらに2018年度はミクロネシアと地理的に連結し、天文的航海術などの進展が見られたと思われる中央ポリネシアのクック諸島の予備調査を、2019年3月に行うことができたので、計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体の目標はスカイスケープすなわち天文現象を含む、空間に属する自然条件を考慮に入れ、ミクロネシアの首長制社会の成り立ちを明らかにすることである。そのために2017年度行ったポーンペイ島の巨石文化といわれる世界遺産ナンマタル遺跡の原型とも言われるミクロネシア連邦東カロリン諸島のコスラエ島のレル遺跡の調査をGPSを用いて行いたい。とくに王墓といわれる Insruun, Inol and Instuの石塚状の墓地の方位、首長の居住域といわれる Lurum および Kinyeir Fulutの遺構の基本方位を確認する。 さらに 内陸部の重要な遺跡といわれるMenkaや Safonfokからレル遺跡がどのように展望出来るかの景観調査も行いたい。同時に、島民から天体や季節風に基づく伝統的な暦や儀礼、それ以外に天体の利用法について聞き取りを行いたい。 その結果を持ち帰り、天文学者の助言を得ながら景観シミュレーション、天文シミュレーションを行い、東部カロリン諸島の季節変化や天体に基づく暦と遺跡との関係を探る。
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