2016 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋島嶼部における強制移住経験者の共感による連帯と排他性の生成に関する研究
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16H05688
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
風間 計博 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70323219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 共感 / 排他性 / ディアスポラ / 太平洋島嶼部 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始年度であったため、共感・感情に関わる基礎的な文献収集・文献研究に重点をおいた。また、研究会を開催し、太平洋島嶼部および他地域を専門とする人類学者を招聘して意見交換を行った。こうした文献研究と議論を経て、共感という心的現象に密接に関わる共生・共存概念について、理論的考察を行った。とくに、政治哲学・法哲学における多文化主義批判、近代的な人間観の概念の再検討を行った。これらの成果として、日本文化人類学会学会誌『文化人類学』の特集「現代世界における人類学的共生の探究」の序論を執筆し、単行本『交錯と共生の人類学ーオセアニアにおけるマイノリティと主流社会』(ナカニシヤ出版)を編者としてとりまとめたうえで、序論および個別論文を執筆した。 加えて、キリバスの首都タラワおよびフィジー都市部において実地調査を行い、バナバ人ディアスポラおよびキリバス系住民の生活実態について情報収集を行った。まず、フィジーの首都スヴァ近郊には、キリバス系移民の集住地が点在しており、オールド・カマーおよびニュー・カマーのキリバス系住民に混じって、バナバ人が生活していることが明らかになった。また、フィジーのランビ島やスヴァからキリバスに渡航して職を得たバナバ人の移住者に面談することができた。加えて、キリバスに渡ったバナバ人が、さらにニュージーランド等へ三次移住を行う例を見出した。実地調査を通じて、国境を越えたバナバ人の移動と生活の方策について、大まかな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献研究や研究会での議論により、基礎的な理論的整理をを行うことができた。その成果として、他大学等に所属する人類学者の協力を得て、本研究課題に関連する主題について学会誌の特集を企画立案し、刊行することができた。加えて、太平洋島嶼部を専門とする人類学者の論考を束ねた単行本を編者として上梓することができた。また、海外実地調査により、キリバスおよびフィジー都市近郊におけるバナバ人の生活動態に関する大まかな情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、共感・感情に関わる人類学的文献、社会学、心理学・認知科学等の文献を収集し、文献研究を進める。また、隣接分野の研究者を交えた研究会を積極的に開催し、議論の方向性を絞っていく予定である。さらに、海外実地調査により、バナバ人ディアスポラにおける集合的感情の態様に関する民族誌資料を蓄積する。インフォーマントの確保が可能であれば、フィジーを離れて三次的な移住を行ったバナバ人の生活を観察する。
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Research Products
(2 results)