2017 Fiscal Year Annual Research Report
平和構築と政治的排除~なぜ過ちは繰り返されるのか~
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16H05698
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
東 大作 上智大学, グローバル教育センター, 准教授 (90608168)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 平和構築 / 和平調停 / シリア / 南スーダン |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度については、8月後半から9月後半にかけて、5週間にわたり、レバノンとジュネーブにおいて、シリアの和平プロセスの現地調査を行った。レバノンでは、3か所の難民キャンプで、シリア難民への聞き取りを実施。またレバノン在住のシリア人専門家にシリア内戦の状況についてインタビューをして回った。またジュネーブでは、米国、EU、トルコ、サウジアラビア、カタール、イラン、ロシア、シリアなど、各国政府代表部のシリア担当官や大使にインタビューし、国連シリア特使のデミツラ特使にもインタビューを行った。その内容は、まず9月末にNHK国際放送のニュース番組の企画で放送され、私の解説とインタビューが世界中に発信された。また国連本部の平和構築支援オフィスが主催する講演会でも、シリア調査について発表した。その後、上智大学国際関係研究所から、ワーキングペーパー「シリアの和平プロセスの最新情勢とその課題」を発表した。それ以外にも、国連学会が年に一度編纂する「国連研究」において、「トランプ政権、多国間主義、そして日本~グローバルファシリテーターとしての役割」を発表した。2018年2月には、外務省の公務派遣で、イラクを訪問し、イラクの3人の副大統領と個別に懇談しつつ、ナハライン戦略研究所で「ISIS後のイラクの平和構築」を課題に基調講演を行い、好評を博した。そのまま、ベイルートとジュネーブでシリア和平プロセスのフォローアップの調査を行い、その後エチオピア、ウガンダ、ケニアを周って南スーダンの和平プロセスの調査を行った。イラク訪問の成果については、3月31日発売の雑誌「外交」誌上において、「ISIS後のイラク 平和構築の課題」とする論文を発表し、その成果を共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
外務省の講師派遣でイラクを訪問し、3人の副大統領と懇談して、今後のイラクの平和構築の課題について研究を深めることができたのは、計画外の成果であった。このイラク訪問は、2016年度に当該研究課題によって実施した南スーダンの調査を基に、自衛隊が南スーダンから撤収した後の代替策について、外務省の幹部相手に説明をしていた際に、国際協力局長よりイラク訪問への期待が小生に対して示され、実現したものであり、当該科研の調査をきっかけとした、思いがけない調査の進展であった。シリアについても、国連シリア特使の全面的な支援なども受けることで、シリア和平に関係する殆どすべての関係国へのインタビューを行うことができ、計画以上に調査を進展させることができた。また南スーダン調査についても、JICAの平和構築支援室長だった花谷厚氏が、2017年夏より、ウガンダにおける南スーダン難民のホストコミュニテイ支援の責任者になったことで、花谷氏の全面的な応援のもと、ウガンダにおける難民キャンプの視察が可能となった。こうした幸運も重なり、当初の計画以上に調査は進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は、当該科研の最終年度であり、これまでの3回にわたる海外現地調査の内容をまとめ、発表することが大きな目標となる。6月には、ニューヨークにある、国連関連の最大の研究所、国際平和研究所(International Peace Institute)において、小生をメインスピーカーにした「持続的な平和作りと包摂性」に関するセミナーが開かれ、シリアや南スーダン、イラクの調査結果を発表する予定である。またその後、執筆活動を初め、2019年中にも単行本で、これまでの調査をまとめた本を出版することを目標にしている。そのため、2019年2月から3月にかけて、シリア和平プロセスや南スーダン和平プロセス、イラク、また場合によってはミンダナオ和平プロセスの現地調査を行い、最新の情勢を改めて把握したうえで、出版につなげたいと考えている。
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