2017 Fiscal Year Annual Research Report
越境する社会科学からアプローチする比較日本文化研究
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16H05715
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
丹野 清人 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90347253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00272774)
吉田 舞 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50601902)
木下 ちがや 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (50772050)
鳥山 淳 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (60444907)
堀江 孝司 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70347392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 越境する社会科学 / 比較日本文化研究 / グローバルヒストリー / アモルファスソシオロジー / クリスタル社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本を普遍的に説明する枠組みを社会学、政治学、歴史学といった社会諸科学から「比較文化」をキーワードに設定して研究を行なっている。これをこの研究メンバーは「越境する社会科学」としているが、ここでいう越境はそれぞれのディシップリンを越境するだけではなく、現代日本社会が様々な越境現象から成り立っているとも考えている。 本年度はとりわけ日本社会に生じている様々な市民運動とそのプロテストの様式に着目して研究を進めた。具体的には、研究代表者丹野清人は、2016年に横浜地裁が川崎市でのヘイトデモを禁ずる決定を行ったが、この決定に至るまでの川崎でのヘイトスピーチに対抗する運動とその運動に連動した地裁決定文、およびその決定を正当化する論理構成を明らかにした。分担研究者田中ひかるは、日本でのアナーキスト運動の中に同時代の海外との交流が絶えず新しい運動の様式をもたらすと同時に人的にもグローバルに広がりを持つ者であって、それがグローバルヒストリーとして解釈できることを明らかにした。分担研究者木下ちがやは911以後の反原発運動は、東アジアでの反原発運動と繋がりを持っており、海外からのインプットが国内の運動の動向にも影響を与えていることを明らかにした。分担研究者鳥山淳は、沖縄の基地問題に代表される社会問題が沖縄の置かれた日本国内の中での位置付けとアメリカにとっての位置付けとの二重の辺境性によって規定されるものであることを明らかにした。分担研究者堀江孝司は越境現象が日本の社会科学に与えている影響を研究し、分担研究者吉田舞はフィリピンの先住民族アエタを事例に海外からのNPOによる支援がかえって先住民族を貨幣経済に追い込み、貧困に導いていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者丹野清人、分担研究者吉田舞は本研究費を用いて実施した研究成果の一部を活用して『「外国人の人権」の社会学:偽装査証、少年非行、LGBT、そしてヘイト』(吉田書店)および『先住民の労働社会学:フィリピン市場社会の底辺』(風響社)という単著を公刊している。また、分担研究者田中ひかるは編著者として『社会運動のグローバル・ヒストリー:共鳴する人と思想』(ミネルバ書房)を公刊している。このように書店で購入できる出版物としても複数の研究成果を着実に出している。 また、分担研究者田中ひかる、分担研究者堀江孝司、分担研究者木下ちがやは、研究協力者杉本良夫と加藤哲郎とともにオーストラリア日本文化研究学会でパネルを一つ立てて、加藤哲郎をパネルのモデレーター、分担研究者が国際学会発表を行い、それに杉本良夫がコメンテーターとしてコメントを付ける、という海外での本研究の研究成果発表を行った。もちろん、このオーストラリアでの発表は全て英語でおこなったものである。 このように本研究を実施している研究代表者、分担研究者、そして研究協力者は、書かれたものとしての研究成果を着実に出版に結びつけているし、かつまた海外での英語での研究発表も積極的に行っている。これらを鑑みれば、通常ならば本研究の進捗状況は当初の計画以上に進んでいると評価しても評価しすぎではないであろう。しかしながら、本研究の当初計画では、研究成果を英文出版に結びつけることとしていることを考えると、おおむねに順調に進展しているという評価にした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに研究成果についての日本語での活字化された文献としての発表および英語での口頭発表は着実に進んでいる。今後は各自の研究を着実に進めると同時に、当初計画通りに最終年次に英文文献として公表できるように、各自の研究の英文原稿化に取り掛かって行く。次年度が最終年次の一年前であるが、最終年次は英文での出版のみを目指すことにしているので、実質的な研究活動は次年度が最後の年となることになる。そのため、次年度はこれまでの研究を十分に反省した上で、できていない部分を各自は埋めていくことが求められる。
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Research Products
(13 results)