2018 Fiscal Year Annual Research Report
Search for extrasolar planets with microlensing
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16H05732
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 文雄 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (80184224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米原 厚憲 京都産業大学, 理学部, 教授 (10454472)
松原 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (80202323)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / 重力レンズ / 惑星形成 / 光学赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、銀河中心付近のマイクロレンズ法による太陽系外惑星の探索を実施し、惑星形成の解明を目指すものである。この手法は、視線速度法やトランジット法などと比べ、外側の軌道を回る惑星に感度が高く、地球質量程度まで発見可能であることが特長である。 観測は、ニュージランド・マウントジョン天文台に設置した1.8m広視野望遠鏡によるサーベイ観測と、同天文台の61cm望遠鏡をはじめとする世界各地の望遠鏡による追観測によって、重力マイクロレンズ効果による増光現象の光度曲線(明るさの時間変化)を求めた。この光度曲線の詳細な解析を行うことにより、太陽系外惑星の発見を行う。この解析は、特異性のある重力レンズ効果のモデルによるフィッティングを行い、複数の局所解の中から最適解を求める複雑な解析を必要とし、通常1年以上かかる。 計画された2018年の観測は、日本から派遣した観測員(多くは大学院生)と現地観測員の協力によりほぼ予定通り実施され、リアルタイム解析によりバルジ方向に413個のマイクロレンズ事象を発見し、メールおよびホームページによって世界中の研究者に通知を行った。また、惑星の可能性のあるアノーマリー(変位)が観測された事象や惑星発見の可能性の高い高増光率の事象は、61cm望遠鏡や世界中の多くの望遠鏡と協力して集中的な観測を行った。これらの事象に対するこれまでの解析は、国際協力で実施されており、これまでのところ、5、6個の惑星候補が発見されており、さらに詳細な解析が進行中である。これらの結果は、解析が終了したものから順に学術誌等で公表する。 また、今年度は大マゼラン雲でのマイクロレンズ事象が各県され、トランジット観測衛星TESSなどによる追観測も行われた。今後、こうした事象が増えれば、銀河系外惑星の発見も期待できる。そのほか、惑星以外にも褐色矮星などの発見もなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測に関しては、大きなトラブルも無く、日本から派遣した観測員と現地観測員との協力もうまく行った。また、アメリカやニュージーランドの研究者・学生による観測も行われ、観測における国際協力が有効に機能してきた。リアルタイムデータ処理によって、マイクロレンズ事象の発見・惑星などによるアノーマリー(変位)発見もうまく機能し、世界的な観測網による追観測も順調に進んだ。 これらに加え、最近では衛星を使った宇宙からのマイクロレンズ観測が盛んになって来た。赤外線天文衛星Spitzerは、すでに冷却用のヘリウムを使いきっているが、マイクロレンズ観測にはまだ使える。残念ながら、Kepler衛星は運用を停止したが、今後も衛星を使った宇宙からのパララックス観測は行われると予想される。 こうした宇宙からのパララックス観測により、従来距離が決まらないために不正確だった物理パラメーターも良く決まる様になってきた。国際協力によるデータ解析も順調に進行し、次々と学術誌に結果を公表している。その多くは、惑星発見のものである。発見された惑星の統計解析も行われ、惑星の頻度が海王星程度で頭打ちになることが判明した。同様の頻度分布の折れ曲がりは、トランジット法による内側の惑星に関しても確認されている。今後の理論的な研究に期待したい。 この様に、研究は着実に進展している。今後、さらに発見数を増やすとともに、衛星による宇宙からの観測を実施し、様々な統計解析を実施することにより、2020年台に予定されているNASAのWFIRST, ESAのEuclidなどによる本格的な宇宙からのマイクロレンズサーベイに繋げられることが期待できる。こうした状況から、おおむ ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュージーランドでの観測手法はすでにほぼ確立しており、今後は主として維持・運用が中心となる。予想される改善点としては、国際協力を推し進め外国の研究機関(ニュージーランドやアメリカの大学・NASAなどの研究機関)による観測などである。一方、世界的な観測網による追観測は、今後も増え続けることが予想される。韓国のKMTnet(チリ、南アフリカ、オーストラリア)も徐々に立ち上がって来たので、こうした観測網との協力も今後重要となる。Spitzer衛星との協力も今後さらに推進し、物理パラメーターのより良い決定を図るとともに、2020年代はじめに予定されている、Euclidや2030年代に打ち上げ予定のWFIRST衛星による本格的な宇宙からのマイクロレンズ観測に備える。 データ解析に関しては、当面これまでの国際協力によるデータ解析体制を維持し、さらに成果を上げる。また、それと平行してこれまでの解析法の改良を試みる。マイクロレンズのデータ解析は、特異性のある重力レンズの増光を扱うため、モデルの計算自身も難しく、局所解が多数出てきてしまう。このため、多くの計算時間と事象ごとに多くの手作業を必要とする。また、惑星系の様な多重レンズの問題を解くことは非常に難しく、これまで実用的に解くことができたのは、3重レンズ(1主星+2惑星、2主星+1惑星など)までである。今後、宇宙からの観測が本格化して測光精度が高くなると、惑星系によるわずかな増光が多数発見される可能性がある。これらの問題は、いずれも解決が困難であるが、多重レンズに関しては繰り返し近似法に目処がたってきたので、その実用化を目指す。 今後、さらに進めなければいけないのは、発見数を増やし統計解析をして、理論と比較することである。これまで、統計解析はある程度出来ているが、理論との比較は理論側の進展も重要となる。
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