2018 Fiscal Year Annual Research Report
よりよい生活再建に向けた移転再定住計画プロセスの解明:台風ハイアン被災地を対象に
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16H05752
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井内 加奈子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60709187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MALY Elizabeth 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00636467)
桜井 愛子 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 准教授 (00636003)
姥浦 道生 東北大学, 工学研究科, 准教授 (20378269)
松丸 亮 東洋大学, 国際学部, 教授 (40708377)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移転再定住 / コミュニティ再建 / 土地利用 / 台風ハイアン |
Outline of Annual Research Achievements |
台風から5年目となる本年度は、復興計画/移転・再定住計画の進捗について、国やタクロバン市の職員を中心に、ヒアリング等を介して、進捗・現状、課題の把握を行った。さらにタクロバン市内では、3年前から対象としている被災コミュニティの移転・再定住の履歴・実情を把握し、沿岸部で生活を継続する住民と移転した住民を対象に、生活状態やソーシャルキャピタルについてのモニタリング調査を継続して行った。移転先地域における、学校再建についての調査も行った。
以下に成果を簡潔に記す。国(都市住宅局)の統計データでは、台風から4年目には約45%(5,500戸)の住民が移転先で生活していることとなっているが、実際には、移転先住宅が完成しておらず移転できていないものや、居住のための手続きが取れず沿岸部に住み続けるものなどがいる。さらに、新しい居住地で不法に住宅を占領している世帯もあり、市は住宅の利用実態を確認中である。民間団体により建設されている幾つかの移転先住宅は着実に工事がすすんでおり、来年度中には居住が可能となる状況が確認出来た。移転先に居住する住民は、一旦生活が困窮するものが多かったが、昔の人的ネットワークを駆使した新しいビジネスの立ち上げなどによって、現時点では生活が回り始めていることが観察された。新規の学校も計画・建設され、仮設校舎の場合もあるが、子どもたちが教育を受ける環境が整いつつある。一方、被災沿岸部では、移転に時間がかかることと、移転後に生活が困窮する例を目のあたりにして、移転を好まない住民が増加した。ただし、被災地域の物価は上昇したままで、経済的には被災前よりも困難な状況になっている。さらに、被災沿岸部のインタビュー対象者のうち約80%が移転先にも住宅を有している実態が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のメンバーは、本年度、マニラやタクロバン市に計4度赴き、現地調査を行った。主にタクロバン市の復興政策・計画や防潮堤・埋め立ての計画・実施の変遷について、国・市・住民レベルの関係者・対象者へのヒアリングを通して実態を把握・確認し、これからの復興と発展の方向を確認した。具体的には、もとの沿岸コミュニティ住民の移転・再定住の現状把握(被災沿岸部と移転先)を目指した調査、NGOなど民間部門による住宅建設進捗の実態調査、防潮堤の建設状況実態調査、移転先における学校と地域の関係作りの現況などの調査を継続して実施した。収集したデータやその分析結果は、学会発表やプロシーディングスでの出版を行ったほか、ハイアン復興についての事例記事がケーススタディーアワードを受賞するなど、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は、平成30年度に行った移転・再定住地区のモニタリング調査を、沿岸部と移転先のコミュニティを対象に継続的に実施する。大統領選に伴う政権交替から3年が経過し、住民の移転を率いる地方自治体の政策・施策が再度明らかになりつつある一方、引き続き移転先住民の生活再建に時間を要していることから、内陸の移転先と沿岸の元コミュニティの両地域で生活する家庭が増加した。そのため、各地域での生活再建過程を個別に観察することに加え、両地域を行き来する家庭の生活再建実態も分析対象に加える。地方自治体は、このような現状を察知し、移転先の住民の定住に取り組んでいるのに加えて、コミュニティホールの建設を通して地域づくりを行っている。これらの動向を総合的に捉えるため、地方自治体や対象地域のコミュニティリーダーへのヒアリングも継続する。収集したデータは、分析を加え、多方面で発表すると共に、最終年次となる本年度は、フィリピンで研究の報告会を開催する予定である。また加えて、アジア諸国の先行事例との国際比較を行う。
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Remarks |
Lincoln Institute of Land PolicyとACSP学会からRhetoric of recovering resilient: Unveiling how building back safer transforms into development for prosperityのタイトルで2018 Case Study Awardsを受賞。 .
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Research Products
(7 results)