2016 Fiscal Year Annual Research Report
Diversification and evolution of the pollination system of Mucuna macrocarpa (Fabaceae) in relation to the variation of local fauna
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16H05771
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
伊澤 雅子 琉球大学, 理学部, 教授 (10192478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
傳田 哲郎 琉球大学, 理学部, 教授 (50284948)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 送粉生態学 / ウジルカンダ / 訪花者 / タイ / リス / 分子系統関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度にはタイのSakaerat eにおいてウジルカンダ送粉様式に関する野外調査を開始した。10個体以上を観察対象として設定したが、28年度は例年にない異常な旱魃のため、蕾の伸長がほとんど見られず、本地域のウジルカンダと訪花者についてはデータを得ることはできなかった。また、同調査地において結実に関する調査を実施予定であったが、翌年に延期した。同調査地で、他の植物への訪花行動から送粉者であることが予測された2種のリスの分布状況、活動パターン、採餌行動に関する調査を実施した。 平成28年度から継続して、平成29年度までタイの同一調査地において、開花した花序を対象にして、送粉者の特定を試みるための自動撮影調査と直接観察調査を実施した。自動動画撮影カメラによる調査の結果、ハイガシラリスとフィンレイソンリスによる訪花が記録できた。花の形質については、開花花数が少なく調査できなかった 台湾、奄美大島、沖縄島、大分のサンプルについて、分子系統学的解析を実施した。葉緑体DNAの4つの領域について塩基配列を比較した結果、8種類のハプロタイプ(A-H)が確認された。分子系統樹上では、大分から台湾で検出された5つのハプロタイプ(A-F)からなるクラスターと、タイで検出されたハプロタイプGとHからなるクラスターに分かれた。タイと台湾以北の地域の間で共有されるハプロタイプは確認されず、両地域の間には遺伝的に大きなギャップがあると考えられた。一方、大分から台湾にかけての地域の間にはハプロタイプの共有があり、過去に何らかの形で遺伝的交流があったことが示唆された。 研究発表に示した論文、学会発表の他に、アウトリーチ活動として、小学校で出前授業を行った。また、タイのカウンターパートが在籍するチュラロンコーン大学におけるセミナーでウジルカンダの送粉様式について発表するとともに、情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
タイでは、平成28年度は前年度の夏季からつづく例年にない異常な旱魃の影響により、花の状態が悪く十分なデータが得られなかった。また、この異常気象の影響は、平成29年度初めまで続いたため、28年度末に実施した調査では、ウジルカンダの送粉者は特定できたものの、花形質、結実、繁殖生態に関わるデータは、断片的にしか得られなかった。計画の中のその部分は大きく遅れたことになる。しかし、これは計画立案当初から予想された問題点であり、その場合に適宜計画を入れ替えることも想定していたものである。 タイにおける送粉様式の解明は遅れたものの、その間に、訪花者の有力候補と考えられた2種のリス類の生態調査を行い、環境利用、採餌生態についても十分なデータを収集することができた。この知見はウジルカンダが開花した後に訪花者の行動を解析し、送粉生態を植物と動物の両面から考える上で重要な資料になると考える。 ウジルカンダについての他の調査地である台湾、比較調査を継続している国内の調査地については、野外調査、分子系統学的解析ともに順調に成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度末も、前年度末から平成28年度はじめにかけての花期に引き続き、異常気象の影響を受けて、開花状態が悪かった。そのため、タイの他の地域の開花状況も踏まえたうえで、翌年の花期に同一地域において送粉様式に関する野外調査を再度実施する予定である。台湾、国内についてはこのまま継続予定である。 また、有力な送粉者と想定されたリスについて本年度の調査ではデータは不十分であるものの送粉者であることが確認された。これらの2種リスの生態について、次年度の送粉様式の調査中に補足調査を実施する予定である。送粉様式が明らかになり、これらのリスがウジルカンダの繁殖について中心的役割を果たしていた場合には、本調査で明らかになったリスの生態を考慮した議論を行う。 送粉者に関わる調査とは別に、裂開するまでの生長過程における花内部での雄蕊・雌蕊の挙動について調査を行うため、ウジルカンダの花の採集を行う。採集した花は液浸標本とし、次年度の解析に用いる。 これまでの研究成果を、国際会議(19th International Botanic Congress)で発表するとともに、有力な送粉者と考えられるリスの生態に関する論文を執筆する予定である。
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Research Products
(7 results)