2017 Fiscal Year Annual Research Report
Diversification and evolution of the pollination system of Mucuna macrocarpa (Fabaceae) in relation to the variation of local fauna
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16H05771
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
伊澤 雅子 琉球大学, 理学部, 教授 (10192478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
傳田 哲郎 琉球大学, 理学部, 教授 (50284948)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 送粉生態 / ウジルカンダ / 送粉者 / 哺乳類 / タイ / リス / 台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度初めにはタイの調査地におけるウジルカンダの開花状況は悪かった。この状況が本調査地だけの現象なのかを確かめるために、11月にタイ北部の3か所について結実状況調査を行ったが、いずれの地域においても結実は観察されなかったため、この2年間はタイ全域において開花状況が悪かったと推察された。このことから、本年度末の花期に再び同地域で送粉様式の調査を実施することとした。平成30年2月には気象条件が回復し、多くの個体で開花が観察されたため、送粉様式に関する調査を開始した。10種の哺乳類による訪花が観察され、このうち送粉に大きく貢献していたのは昨年度の予想通り2種のリスであった。これら2種のリスの訪花行動は、先行研究で示した他地域の送粉者の訪花行動と同様であった。花のサイズ、花蜜量の日変化、蜜量、糖度は他地域と差はなく、花の形質は送粉者の異なる他地域と大きな差はないと考えられた。 台湾における花の外部形態と送粉者の形態との対応関係を比較するために、送粉者である哺乳類の形態計測を行った。花の外部形態の計測は前年度までに終了していた。 国内における開花状況とタイにおける開花状況を比較するために、大分および沖縄島で開花状況調査を実施した。いずれの地域においても、2012年から本年まで開花しており、いずれの年も動物による花の裂開が観察された。 昨年度末に採集したウジルカンダの花の液浸標本、および、今年度4月初旬に採集した花を材料とし、裂開するまでの生長過程における花内部での雄蕊・雌蕊の挙動について調査を行った。その結果、ウジルカンダの花がこれまでに報告されたことのないSecondary Pollen Presentation Systemを持つことが明らかとなった。 国内外における研究発表の他に、アウトリーチ活動として、小学校で出前授業を行った。また、リスの生態に関する論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、タイと台湾でウジルカンダの野外調査から、動物相の異なる地域間で、その植物の繁殖戦略がどのように変化するのかを明らかにすること、送粉者の違いが、ウジルカンダの繁殖にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目指している。台湾における調査はほぼ終了し、タイについては平成28年度、平成29年度初めの花期には異常気象のため調査が難航したが、平成29年度後半に十分な成果が得られ、順調に進んでいる。並行して国内での調査を継続することができたことから、温帯域、亜熱帯域、また、島嶼域を含めたより詳細な地域間比較を行うことができる。 また、比較対照とする近縁のMucuna属の調査地を模索し、香港において2種、沖縄県内において1種のMucuna属の野外調査が可能であることがわかった。香港については現地研究者との連携、手続き等の情報収集を開始しており、西表島および沖縄島については花期に現地で予備調査を実施し、調査の実施可能性を検討している。 ウジルカンダの花が裂開するまでの生長過程における花内部についての調査から、雄蕊・雌蕊の形態と挙動、花粉放出のタイミング、柱頭の受粉能力獲得のタイミング等に関して十分なデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるため、補足の野外調査の他、各国のカウンターパートと議論しつつ、全体的なとりまとめ、成果の発信を行う予定である。 海外野外調査はタイと香港を中心に実施する。タイは、国内においても、動物相が地域により大きく異なる。そのため、最終年度は動物相の異なるタイ北部において調査を実施する予定である。また、哺乳類に依存した送粉を行うウジルカンダの送粉様式を近縁のMucuna属と比較するため、香港において近縁種であるM. birdwoodianaおよびM. championiiの送粉様式、西表島および沖縄島においてM. giganteaの送粉様式に関する調査を実施する予定である。 ウジルカンダの国内の調査地については調査を継続する。本プロジェクトの中で、ウジルカンダの繁殖に年変動がある可能性、また気候の変動の影響を強く受けることが示唆されたため、国内については、本プロジェクト終了後も長期にわたるモニタリングを継続するための体制を構築することを計画している。 ウジルカンダの送粉様式に関する学術論文を国際誌に公表する予定である。また、タイで開催際される学会や国内学会で本種の送粉様式に関する講演を行う。
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Research Products
(8 results)