2016 Fiscal Year Annual Research Report
Latitudinal pattern of methanotrophic food webs driving carbon and nitrogen cycling in lakes
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16H05774
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
奥田 昇 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30380281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 雅之 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (70456820)
藤林 恵 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70552397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メタン / メタン酸化細菌 / NC10 / メタン栄養食物網 / 炭素・窒素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)翡翠水庫のメタン栄養食物網の長期観測 台湾の翡翠水庫で2009年より開始されたメタン栄養食物網の長期観測調査を継続して実施した。2015年12月に観察された深底層のメタン極大が冬季全循環によって2016年3月までに完全に消失した。このため、2016年は12月になっても深底層にメタン極大が観察されず、脂肪酸分析の結果からもメタン栄養食物網が未発達であることが確認された。一連の観測結果は、冬季湖沼循環の強弱が次年度のメタン栄養食物網の発達に影響するという本研究グループの提唱する仮説を支持した。 2)NC10の培養実験 翡翠水庫の深底層に特異的に出現する還元的メタン酸化細菌NC10の増殖特性を理解するために還元環境を再現した連続培養実験を実施した。翡翠水庫の湖底泥から採取した細菌の培養開始後、メタン濃度の顕著な減少が観察され、還元的メタン酸化の進行が示唆された。定量PCRによって、NC10の密度変化を調べたところ、培養開始後に増殖するものの、その後、減少に転じることが確認された。 3)メタン栄養食物網の緯度間比較の同時観測体制の整備 湖沼のメタン栄養食物網の緯度間比較を行うために、日本・台湾・フィリピンの同時観測体制を整備した。6月にフィリピンの調査地視察を実施し、セブンレイクス(7つの火口湖沼群)を調査候補に選定した。メタン栄養食物網調査の手法を共有するために、9月に台湾にて3か国合同ワークショップを開催した。琵琶湖(亜熱帯域)、翡翠水庫(亜熱帯-熱帯境界域)、セブンレイクス(熱帯域)で同時観測の予備調査を実施した。冬季の琵琶湖では、深底層に小さなメタン極大が観察されるものの、メタン栄養食物網は未発達であった。セブンレイクスでは、2016年10月より月例湖沼物理観測を開始、底層が周年混合しない部分循環湖であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)翡翠水庫のメタン栄養食物網の長期観測 翡翠水庫におけるメタン栄養食物網の長期観測では、温暖化に伴うメタン栄養食物網の応答メカニズムを理解するためのデータが順調に蓄積している。 2)NC10の培養実験 当初、バッチ培養によるメタン・硝酸添加実験を用いてNC10の増殖要因を検討する計画を立てていたが、還元環境中の化学合成細菌の研究を専門とする林立虹教授(臺灣大学地質科学系研究所)が本研究プロジェクトに参画したことにより、ケモスタットを用いた連続培養系での実験を新たに研究計画に組み込むことができた。NC10の純粋培養系はまだ確立していないが、連続培養実験の導入により、培養条件を柔軟に変更しながらNC10の増殖制御因子を探索することが可能となった。 3)メタン栄養食物網の緯度間比較の同時観測体制の整備 研究計画段階では、熱帯湖沼のモデルとしてフィリピンのタール湖を想定していたが、現地視察によりセブンレイクスが観測調査に適すると判断し、基礎調査を開始した。多項目水質系を導入して、7湖沼群における湖沼物理の鉛直プロファイル観測調査を2016年10月から開始した。サント・トーマス大を中心としたフィリピンの研究チームには、メタン栄養食物網の調査に必要な設備が整っていなかったことから、メタン観測用のGC、および、メタン酸化細菌観察用の蛍光顕微鏡やFISHを導入して、研究環境を整備した。琵琶湖においても冬季鉛直循環前のメタン栄養食物網の予備調査を実施し、3湖沼間で一斉観測調査を開始する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
1)NC10の培養実験 NC10の連続培養実験の結果、還元環境下でメタンが顕著に消費されるのに対して、NC10は培養直後に増加するものの、その後、減少に転じることが判った。この培養条件下において還元的メタン酸化を駆動する担い手を特定するとともに、NC10の増殖維持・促進要因を引き続き検討することが今年度の研究課題である。 2)脂肪酸分析用NC10マーカーの開発 NC10の純粋培養系あるいは濃縮培養系が確立されたら、培養物を脂肪酸分析に供し、NC10特異的脂肪酸マーカーの開発を進めたい。このマーカーが開発されれば、既に開発済みのマーカーを含めて翡翠水庫に出現するメタン酸化細菌の主要3タイプ(Type I、II、NC10)のメタン栄養食物網への寄与率を推定することが可能となる。また、この手法は琵琶湖およびセブンレイクスにも適用できるので、3湖沼の比較が可能となる。 3)セブンレイクスのメタン栄養食物網調査 現在、セブンレイクスの7湖沼群で基礎調査を実施しているが、湖沼物理構造に基づいてメタン栄養食物網を実施するモデル湖沼の絞り込みを進める。モデル湖沼では、GCによるメタン濃度、FISHによるメタン酸化細菌叢、脂肪酸によるメタン栄養食物網の季節・鉛直プロファイル観測を開始する。また、セブンレイクスのメタン酸化細菌叢の分子系統情報が未知なため、台湾とフィリピンの研究交流制度TIGPを利用して、臺灣大学の林教授の協力下でメタン酸化細菌のDNA配列解析を実施する。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Evaluation of surface water quality using multicariate statistical techniques: a case study of Fet-Tsui Reservoir basin, Taiwan2016
Author(s)
Chow, M. F., Shiah F. K., Lai, C. C., Kuo, H. Y., Wang, K. W., Lin, C. H., Chen, T. Y., Kobayashi, Y., Ko, C. Y.
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Journal Title
Environmental Earth Sciences
Volume: 75
Pages: 1-15
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Biodiversity Assessment of Littoral Macrozoobenthos in Laguna de Bay, Philippines2016
Author(s)
Trino, E. M. C., I. B. B De Jesus, E. M. Peralta, H. J. A. Guerrero, C. G. S. M. Arce, J. J. A. Domingo, M. A. Maute, M. D. S. San Miguel, J. C. A. Briones, F. S. Magbanua, A. C. Santos-Borja, R. D. S. Papa & N. Okuda
Organizer
The 16th World Lake Conference
Place of Presentation
バリ(インドネシア)
Year and Date
2016-11-07 – 2016-11-11
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