2016 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの脆弱な稲生態系の地域内不均一性と品種選択に関する研究
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16H05780
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨下 顕彦 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 准教授 (10323487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 武司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40343769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農業生態学 / 塩水遡上 / 生物多様性 / 水不足 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムでは、紅河デルタの海岸に近い3地域の稲作の農家圃場のデータを収集した。そのうちの1つの調査地域NDでは、共同体として、稲作から水産への転換を決めていることも手伝って、最も高い水田内での塩分濃度が記録され、特に夏稲での収量が著しく低下していた。紅河デルタでの塩類遡上に関わる重要な現地データを得ることができた。 また、堤防近傍の最下流の水田群や、排水路よりも紅河に近い位置にある水田群での水深、栽培品種に特色があることを明らかにし、学会発表した。また、2017年度まで繰り越されたが、半年遅れで、約300戸の農家に対して、2地域で家計調査を行うことができた。
カンボジアにも3つの調査予定地へ訪問したが、灌漑修復水田地帯では、生態系の特色は似ている様子で、稲の2期作が続けられている様子であったが、農家の家屋が立派になっている印象を受けた。天水田地帯でも、雨季の天水稲作と乾季の河川堤防近傍での減水期稲作は同じように続けられている風であったが、大きな縫製工場が村にできて、村の経済事情への変化が予想された。深水水田地帯では、浮稲が激減し、増水前稲作と減水期稲作の2期作の導入が施行されていたが、インタビューをしてみると、乾季の水源確保と、乾季のネズミの被害の対策が必要であることが示唆された。
インドでは、ため池水田地帯の土壌調査を行い、収量の聞き取り調査も行ったが、2016年は干ばつのため、1つの村では収穫がほとんどなかった。また、本研究サイトのため池は、河川に連結していないため池(ノンシステムタンク)であるが、比較調査として、同じタミルナードゥ州のやや大きい河川ぞいに連結しているため池水田も調査し、井戸灌漑が進展していること、海岸近傍では地下水の塩分濃度が上がり問題になっている水田もあることを聞き取った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ベトナムでの3調査地域のうちの1つNDでは、共同体で稲作から水産へ転換することを決めており、2016年度は、稲作をしない農家が過半数であった。当初の計画では、塩害の影響を受けながらも稲作を行っている農家への聞き取り調査を予定していたが、急遽、水産農家を含めた家計調査をするように計画を修正し、そのための予備調査を行い、調査対象地域としてRDとNHとを選抜した。
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Strategy for Future Research Activity |
ベトナムでの家計調査のための稲作以外に水産に関する内容を盛り込んだ質問表を作成し、該当地域を2-3選出して、農家レベルでの実態を明らかにする調査を分担者と協力しながら進めてゆく。 インドでは、本研究に関心を持った方が博士課程への留学を希望し、2017年9月入学が内定した。彼女と、研究計画を話し合いながら、進めてゆく予定である。
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Research Products
(5 results)