2018 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの脆弱な稲生態系の地域内不均一性と品種選択に関する研究
Project/Area Number |
16H05780
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨下 顕彦 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 准教授 (10323487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 武司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40343769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農業生態学 / 農業経済学 / 環境調和型農林水産業 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
生産基盤が弱く環境ストレスのリスクが高いアジアの脆弱な稲生態系において、地域の稲生態系内部の水・土壌・塩分条件や生 産リスクの分布・勾配と、それに伴う栽培・品種・生産の多様性(不均一性)を明らかにするべく、カンボジアについて、研究を進めた。現地共同研究者と協力して、灌漑水田地域、深水水田地域、天水田地域それぞれから、合計約150軒の農家に対して、稲作経営調査を行った。3つの作期(早期雨季作、雨季作、乾季作)のそれぞれについて、栽培品種・播種量・収穫量・販売量・資材投入量・労働投入量等を聞き取った。 灌漑水田地域の農家は約2haの水田で、主に2期作(早期雨季作+乾季作、雨季作+乾季作)、深水水田地域では約4 haの水田で、雨季作の1期作または2期作(早期雨季作+乾季作)であり、集約化が進んでいることが示唆された。一方、天水田地域の農家は0.5 ha程度の水田で、雨季作のみが主流であった。米の販売割合は、灌漑水田地域では8割弱、深水水田地域では6割、天水田地域ではコンポンチュナン州の調査地では1割未満、タケオ州では2割強であった。 栽培品種数は、早期雨季作や乾季作では、非感光性の高収量品種を1品種のみ(IR系統、Sen Kra Ob)の作付けが9割以上であったが、雨季作では、在来品種も含めて2、3品種を作付けする世帯の割合が増えた。雨季作の種子は、自家採種による場合が多いが、乾季作や早期雨季作においては、近隣農家からも含めて、購入種子の利用が多かった。農家からの購入では0.3-0.4 USD/kgであったが、精米所や種子会社からの購入の場合は、0.4-0.8 USD/kgとより高くなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カンボジアでの本調査を、現地の研究協力者の事情もあり、2018年度には行うことができず、2019年度に行った(4月、8月)。結果の解析を進めている途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した各調査地でのデータの解析、取りまとめを進めてゆく。ベトナムにおいては、気候変動との関連性のある塩水遡上の影響や適応策に関する投稿論文を進める。カンボジアでは、10年前の調査データとの比較を目指す。インドでは、ため池水田の干ばつの頻度や、降水量の経年変化の解析を進める。また、カンボジア、インド、ベトナム、また関連するアジア等の米作国の稲作統計データを整理する。
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Research Products
(9 results)