2018 Fiscal Year Annual Research Report
凍土融解深の異なる永久凍土林における地下部炭素動態の定量評価と制御要因の解明
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16H05790
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
野口 享太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 智陽 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90391185)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 凍土融解深 / リターフォール / 細根生産量 / 温度 / 含水率 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラスカ大学カリブーポーカークリーク試験地の北東向き斜面に分布するクロトウヒ林に設置した、斜面上部(凍土融解深・大)、斜面中部(凍土融解深・中)、斜面下部(凍土融解深・小)の調査プロットにおいて、前年度に引き続き現地調査を実施するとともに、細根生産量および葉リター(落葉)生産量をクロトウヒとツツジ科など下層植生に分別して解析した。その結果、細根生産量はクロトウヒ、下層植生ともに斜面上部で小さく斜面下部で大きかったが、下層植生の細根生産量が、斜面上部ではクロトウヒの細根生産量の約8割であったのに対し、斜面下部では約1.7倍であった。一方、落葉量の斜面位置による変動パターンは、クロトウヒと下層植生で異なり、クロトウヒの落葉量が斜面上部で大きかったのに対し、下層植生の落葉量は斜面中部で大きく、クロトウヒ落葉量の約1~6割であった。これらの結果は、凍土融解深が小さくなると、落葉量や細根生産量における下層植生の寄与が大きくなり、地下部への有機物供給源としての下層植生の役割がより重要になることを示唆している。また、継続して地下部温度をモニタリングした結果、生育期間(5月~9月)における地表面から深さ10cmの有機物層の平均温度が斜面位置により大きく変わらなかったのに対し、有機物層と鉱質土層の境界面の温度は斜面上部ほど高く、斜面下部ほど低い傾向を示した。この結果は、凍土融解深の小さい林分において、有機物層内の深さ方向の温度変化が大きいことを示唆している。その他、有機物層(深さ10cm)の含水率をモニタリングした結果、融雪後の春期に高く、変動しながら秋にかけて徐々に低下する傾向を示した。また、有機物層の含水率は地表を覆う林床植生のタイプにより異なり、ミズゴケ下の有機物層とタチハイゴケなどの蘚類下の有機物層を比較すると、前者の含水率のほうが高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたように、リターフォール生産量、細根生産量について、クロトウヒと下層植生に分別して解析を進め、凍土融解深の異なる林分間で、地下部への炭素流入プロセスにおける下層植生の寄与が異なることが明らかになった。また、地下部の温度と水分についてもモニタリングによるデータを収集でき、凍土融解深の異なる各調査プロットにおける地下部環境条件の特徴について明らかにすることができた。以上のことから、本研究が概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
凍土融解深の異なるクロトウヒ林における炭素動態の仕組みについて明らかにするために、引き続き、地下部への炭素流入パラメータであるリターフォール生産量、細根生産量、林床植生生産量、炭素放出のパラメータである土壌呼吸速度の解析を進める。これらに加え、窒素濃度など細根の元素濃度の解析を進め、凍土融解深の異なるクロトウヒ林における養分条件と炭素動態の関係についての解析も進める。
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