2019 Fiscal Year Annual Research Report
凍土融解深の異なる永久凍土林における地下部炭素動態の定量評価と制御要因の解明
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16H05790
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
野口 享太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 智陽 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90391185)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クロトウヒ / 下層植生 / 地上部現存量 / 細根現存量 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,アラスカ内陸部の凍土融解深の異なるクロトウヒ林において,クロトウヒおよび下層植生(低木類)の現存量調査を行い,全体として地上部,細根ともに凍土融解深の大きい林分の現存量が大きいことを明らかにした. 本研究では,アラスカ大学カリブーポーカークリーク試験地内の同一北東向き斜面の上部(凍土融解深・大),中部(凍土融解深・中),下部(凍土融解深・小)に調査プロットを設置して毎木調査(幹直径)を行い,Noguchi et al. (2012) のアロメトリー式により地上部現存量を推定した.下層植生については,毎木調査プロットの周辺において地上部を刈り取り,乾燥重量を測定した.細根現存量については,コアサンプリング法による調査を行った. その結果,クロトウヒの地上部現存量は,斜面上部で大きく下部で小さかった.逆に,下層植生の地上部現存量は,斜面上部で小さく下部で大きかったが,地上部現存量全体に占める割合は小さかった(0.1%-1.3%).斜面上部で下層植生の現存量が小さかったのは,クロトウヒのサイズが大きく,林床に光が届きにくいことが原因の一つと考えられた.細根現存量は,地上部と同様に斜面上部で大きく下部で小さかった.なお,斜面下部では,下層植生の細根が細根現存量全体に占める割合が,斜面上部と比べて大きかった.これらの結果は,凍土融解深の差異がクロトウヒと下層植生の成長に大きく影響し,凍土融解深の小さい林分では,低温などの環境条件によりクロトウヒの成長が抑制されていることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凍土融解深の異なる3か所のクロトウヒ林において地上部および細根の現存量を推定した.その結果,凍土融解深が小さいほど,すなわち地下部の温度が低いほど,地上部と細根の現存量が小さいことを見出したほか,下層植生の地上部現存量への寄与が小さいことを確認した.以上のことから,本研究がおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるため,これまでに得てきた細根生産量,リターフォール生産量,地上部・地下部現存量,地下部からのCO2放出速度などのデータから,凍土融解深の異なるクロトウヒ林分における地上部・地下部炭素収支の解析を進める.また,凍土融解深の差異がもたらす土壌温度などの環境要因の違いが,クロトウヒ林の地上部・地下部炭素収支に及ぼす影響について解析を進め,結果をとりまとめる.
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