2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05801
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村山 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60293552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高島 康弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20333552)
牛田 一成 中部大学, 創発学術院, 教授 (50183017)
大屋 賢司 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50402219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 飼料栄養 / 消化吸収 / 衛生管理 / 生産加工 / 野生動物保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガーナの人口は10年で30%増加し、特に北部では深刻な栄養不足が起きている。現状では動物性タンパク源として野生動物の狩猟への依存度が高く、生態系に重大な影響を及ぼしている。本研究では、アフリカ原産で、食用として好まれているグラスカッターについて、(1)消化管内容物のDNA解析による食物分析等をもとにした、適切な飼育飼料の選定、(2)腸内細菌の解析等をもとにした、農産副産物の飼料利用の検討、(3)グラスカッター及び周囲の家畜が保有する細菌、ウイルス及び寄生虫の全容の把握をもとにした、衛生管理方法の検討を行い、肉用家畜としての飼養管理方法を確立する。(4)さらに、グラスカッターの肉の長期保存加工法を開発し、ガーナ北部における飼育及び食肉利用の普及を図る。 本年度は、ガーナ国内の野生グラスカッターのゲノム解析によって、地域多様性を解明した。腸内細菌については、3前年に分離された野生グラスカッター由来の乳酸菌を大量培養し、飼育試験の準備を進めた。衛生管理については、野生グラスカッター体表に付着しているダニを採取し、ダニが保有する微生物を検索したところ、病原性のあるBabesia属原虫、Ehrichia属、Anaplasma属細菌が検出された。また、飼育下のグラスカッター、および周辺で飼育されている草食性の家畜(牛、山羊、羊)の糞便を採取し、腸内菌叢を解析した。またニワトリのトキソプラズマ感染を検出し、グラスカッターへの感染を留意する必要があることが示唆された。 2017年5月に長野市で開催された日本アフリカ学会においてフォーラム「ガーナにおけるグラスカッター飼育プロジェクト」を開催し、村山、大屋、牛田らが発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ガーナ国内の野生グラスカッターのゲノム解析によって、地域多様性を調査したところ、東部に位置する世界最大の人造湖、ボルタ湖を境界とする遺伝的隔離の可能性が示唆された。腸内細菌については、3前年に分離された野生グラスカッター由来の乳酸菌、Lactobacillus ingluviei 分離株の系統解析を実施し、ニワトリ由来の既存株から最も系統的に離れた1菌株を選抜し、MRS平板培養の後、MRS平板液体培地中で大量培養後、凍結乾燥菌末を作成した。凍結乾燥菌末の生残数を測定し、充分量の菌数が確保されていることを確認し、グラスカッター飼育試験に使用する目的でガーナ大学に搬入した。 衛生管理については、野生グラスカッター体表に付着しているダニを採取した。形態および分子生物学的手法により種の同定を試みたところ、殆どがマダニ属のIxodes aulacodiであった。ダニが保有する微生物を検索したところ、Babesia属原虫、Ehrichia属、Anaplasma属細菌が検出された。Ehrichia属、Anaplasma属は、ヒトや家畜に病原性を示すことが報告されている種である。また、飼育下のグラスカッター、周辺で飼育されている草食性の家畜(牛、山羊、羊)の糞便を採取し、腸内菌叢を解析しており、野生グラスカッターの腸内菌叢と比較予定である。またガーナの小規模農家のニワトリを検査したところトキソプラズマに不顕性感染していると思われる個体を見出した。農場周辺の土壌がトキソプラズマに高度に汚染している可能性があり、グラスカッターへの感染を留意する必要がある。 2017年5月に長野市で開催された日本アフリカ学会においてフォーラム「ガーナにおけるグラスカッター飼育プロジェクト」を開催し、村山、大屋、牛田らが発表した。以上より、計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から継続して、飼料栄養、消化吸収、衛生管理の研究を実施する。 (1)飼料栄養(村山、海外共同研究者):野生グラスカッター消化管内容物のDNAを解析して食べている植物種を同定する。また家畜化に関わる馴化関連遺伝子を探索する。 (2)消化吸収(牛田、海外共同研究者):飼料および糞中の一般成分や腸内細菌の解析を行い、分解活性を最大化するための基礎知見を得る。 (3)衛生管理(大屋、高島、海外共同研究者):グラスカッターおよび周囲の家畜に感染する細菌、ウイルス、寄生虫を網羅的に把握し、公衆衛生、家畜衛生上の問題となり得る病原体リストを作成し、診断系を開発する。 (1)~(3)から得られた情報に基づき、新たに (4)増殖・加工を実施する。ガーナ大学で飼養管理技術を確立し、飼料給与や衛生管理のテキストを作成する。増殖したグラスカッターの肉を用いて、ガーナ大学食品科学部の大学院生らが中心となり、Kayang, Adenyo(ともに海外共同研究者)らの指導の下、衛生に配慮した缶詰などの長期保存加工法を開発する。 ガーナ食料農業省など政府機関、農業普及員、飼育農家との連携を生かして、ガーナ北部の飼育農家における飼育と加工の知識技術の普及を支援する。また環境保全意識を啓発するパンフレットを発行し、小中学校での環境保全と持続的資源活用の教育を実践する。先行プロジェクトの成果により、南部のガーナ大学および北部の試験飼育農家において、飼育に必要なケージなどのインフラ設備は整っているので、得られた情報は速やかに活用できる見込みである。
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Research Products
(55 results)