2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of Soil Factors Supporting Safe and High-Quality Production of Special Local Tea in Northern Vietnam
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16H05809
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
岩崎 貢三 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (40193718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 壮太 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (10304669)
島村 智子 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (50350179)
康 峪梅 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (70284429)
上野 大勢 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (90581299)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土壌学 / 植物生育環境学 / 植物栄養学 / 食品化学 / 農林水産物 / ベトナム / 茶 / 茶園 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に選定した各圃場で採取した土壌および茶葉試料について各種分析を行い,以下の結果を得た. 1.土壌試料 Tan Cuong土壌の土性は砂壌土~軽埴土であった.pHは表層土3.2~4.4,下層3.4~5.0とSong Cau土壌に比ベ酸性が強かった.川から遠い圃場の多くは粘土含量が高く,交換性Alが高い傾向があった.強酸性の条件にも関わらず表層土,下層土ともに交換性塩基,可給態Pは比較的多く,過剰施肥による下方への養分流亡が懸念された.全炭素・全窒素は栽培年数が増えるほど高く,剪定枝葉由来の有機物の経年蓄積によると推察された.一方,粘土含量と聞き取りに基づく茶葉の生産者価格の間に負の相関がみられ,川に近い粗粒質土壌では,物理性の面で茶樹の生育環境は良好であったと考えられた.川から遠い圃場では,強い酸性条件のため過剰のAlが茶樹へ悪影響を及ぼしている可能性が示唆された. 2.茶葉試料 同一品種(Trung Du)の養分含有率(新芽)を地点間で比較すると,洪水の影響を受ける川沿いの圃場では,N, P, Zn, Cu等の含有率が川から遠い地点よりも高い傾向にあった.一方,Al含有率は川から離れるにつれて高くなる傾向が認められた.同一圃場で栽培されていた3品種(LDP1, Trung Du, TR777)の養分含有率(新芽)を比較したところ,LDP1のN, P, Cu含有率は,他の品種よりも有意に低く,Ca, Zn含有率は高い傾向が認められた.一方,茶葉の熱水可溶性養分含有率と全含有率の間の関係を調べたところ,P, Mg, Mn, Zn, Alで有意な相関が認められた.熱水抽出物の抗酸化活性は,Son Cauの茶葉のほうがTan Cuongよりもやや高い傾向が認められた.また,総ポリフェノール量・抗酸化活性と熱水可溶性P含有率との間に負の相関が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,ベトナム・タイグエン省の特産茶葉生産地およびその周辺の茶園において土壌及び茶葉の調査を実施し,安全・高品質な茶葉生産を支える土壌要因,生産物の品質および機能性等の付加価値を科学的に明らかにすることを目的としている. 平成29年度は,前年度に選定したTan Cuong村のCong川を起点とする3本のトランセクト上で川からの距離が異なる各4圃場ならびに茶葉の品質が劣るとされる山間部のSong Cau村で選定した3圃場で採取した土壌および茶葉試料について各種分析を進め,土壌の一般理化学性,茶葉の養分含有率,茶葉の熱水抽出物の総ポリフェノール量,抗酸化活性の分析を終了した.しかし,平成28年度,重点的に調査を実施する茶園を選定するまでに時間を要したため,全体的に研究の進捗に遅れがみられ,現地圃場で採取した土壌溶液中の各種イオン濃度の分析,微量元素の形態別存在量の分析が未完了となっている.今後,総力を挙げて分析を完了させ,得られた結果を取りまとめる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度は,これまで採取した土壌・土壌溶液試料,植物試料の分析を継続して実施し,土壌環境,生産物の評価を行う.得られた結果に対して総合的に考察を加え,調査地域の茶園における土壌改良指針,付加価値向上に対する方策を提示する. 1.土壌環境の評価: 選定した茶園で土壌溶液採取装置を埋設して採取した土壌溶液について,イオンクロマトグラフを用いて各種イオン組成を分析し,地点間での違いや季節変動を明らかにする.また,輸入した土壌試料について,高知大学において一般理化学性,各種微量元素の全量・有効態含量の分析を継続する.さらに,品質・生産性の高い圃場と低い圃場の間で差が認められた元素について,選択溶解-逐次抽出法で形態別存在量を分析し,微量必須元素や有害元素の動態を明らかにする. 2.生産物の評価: 採取した茶葉について,HPLC法によるテアニン及びカテキン類の含有率,DPPH法及びWST-1法による抗酸化活性の測定を継続して実施し,ベトナム茶の品質の指標とする. 3.まとめ: 30年度末に,得られた各種データをとりまとめ,立地条件の異なる圃場間における土壌環境の比較を行う.また,茶葉の無機成分量,機能性成分量,抗酸化活性等について,同一品種の圃場間での比較,同一圃場における品種間の比較を行う.得られた結果に基づいて,土壌環境と茶葉の品質・機能性との関係を解析し,総合的に考察を加える.ベトナムまたは日本においてセミナーを開催し,調査結果を報告するとともに,調査地域の茶園における土壌改良指針,付加価値向上に対する方策を提示する.また,本研究の成果を日本土壌肥料学会等で発表する.
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