2017 Fiscal Year Annual Research Report
Systematics and transmission ecology of novel liver flukes causing human illness in Ecuador
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16H05820
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
杉山 広 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (00145822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板垣 匡 岩手大学, 共同獣医学部, 教授 (80203074)
高木 秀和 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90288522)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝吸虫 / エクアドル / 肺吸虫 / 米国 |
Outline of Annual Research Achievements |
エクアドル北西部のエスメラルダス県にAmphimerus属肝吸虫の分布地があり、住民やイヌ・ネコが感染している事実は既に報告した。流行地の淡水魚から,本虫のメタセルカリアを多数検出できたので,このメタセルカリアを用いた感染試験を実施し、スナネズミやハムスターが実験的終宿主となることを、2017年度に明らかにした。しかしニワトリやマウス・ラットへの感染試験では成虫が検出できず、宿主に選択性があることが示唆された。
住民の寄生状況調査には、直接塗抹法で糞便を調べてきたが、Kato-Katz法、MGL法、単純沈殿法という代表的な集卵法と比較し、Kato-Katz法で高い検出率が得られることを明らかにした(論文投稿中)。また成虫を材料に解読したリボソームDNA・ITS2領域の配列を標的として、LAMP法を構築し、既に現場での検査に応用している。
本属の各種吸虫に関しては、分類学的位置付けが明確でない。米国には、Amphimerus属の模式種である A. ovalisがスッポンに寄生する。また獣医学上の重要種として、ネコなどの哺乳動物からは、A. pseudofelineus が検出されている。さらに鳥類には A. elongatus が寄生する。そこでAmphimerus属吸虫の比較分類学的検討を進めるために、米国で A. elongatusのメタセルカリアを分離・収集した(淡水魚ブルーギルに寄生)。得られたメタセルカリアを用いて各種動物への感染試験を行ったところ、本虫は従来から実験的終宿主として報告されていたニワトリ(鳥類)だけでなく、ハムスターなどの哺乳類にも感染し、成虫にまで発育することを初めて確認した。現在、感染実験などで得た材料を用い、本属各種を対象として、分子系統関係の解析に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の対象国であるエクアドルで、本肝吸虫のメタセルカリアを安定して多数検出できる淡水魚の種類を特定できたこと、スナネズミやハムスターなどの実験動物が終宿主となると明らかにしたこと等から、当初の課題である発癌試験の実施の目途が立った。また住民の寄生状況調査に最適な寄生虫学的な検査法が特定でき、さらに集団検査の迅速化を図るための分子生物学的手法としてLAMP法も構築できた。これに加えて米国で、本虫の種同定に必須な同属別種として、A. elongatusのメタセルカリアを分離・回収し、感染試験で本虫の生物学的・形態学的特徴を明らかにできた。エクアドルの肝吸虫との比較検討に目途が立った。これらの実績により、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本肝吸虫のメタセルカリアを集めて、実験的な好適終宿主と分かったハムスターを用い、肝吸虫を感染させるグループ、発癌剤であるジメチルニトロソアミン(DMN)を投与するグループ、DNAの投与後に肝吸虫を感染させるグループ、そして対象群を設け、本肝吸虫による発癌試験の実施を予定している。また、ハムスターから得た成虫を利用して抗原を調製し、血清診断を実施するための実験系を構築する予定である。エクアドルと米国の中間に位置するコスタリカにも、近縁種の肝吸虫が分布すると報告されていることから、共同研究の推進に関する議論を深めるために、現地に研究者を訪問し、虫体材料の観察を実施する予定である。肺吸虫と肝蛭に関しても、当初に予定した疫学・形態学・分子生物学に関する検討に取り組む予定である。
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Research Products
(6 results)