2017 Fiscal Year Annual Research Report
大規模疫学調査に基づく中国の食道癌発症リスクの同定と発症低減策の費用対効果の分析
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16H05825
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
赤澤 宏平 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (10175771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 卓 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70586940)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食道癌 / 発症リスク / リスク因子 / 環境要因 / 生活習慣 / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
食道癌の原因究明と発症予防策の検討は国際的にも喫緊の課題である。本研究では次の2点を目的とした疫学研究を行う。 1.中国河北省の食道癌多発地域とそれ以外の地域において、環境要因、後天的要因の大規模疫学データを収集し、食道癌発症に強く関与する確証的なリスク因子を同定する。 2.発癌物質の除去や生活習慣の改善コストと癌発症リスクの低減効果とを考慮した費用対効果分析を行い、中国のみならず国際的な食道癌発症予防策を考える際の科学的根拠とする。 本研究は、中国の科学技術院の立会いの下で締結された新潟大学-河北医科大学第四病院の共同研究プロジェクトである。日本側研究者と中国側研究者の交流も平成28年度には2回行った。研究者メンバーは日本側、中国側ともに食道癌、胃癌を含む消化器外科の専門医、統計学・疫学の専門家、診療情報管理士で構成されている。河北医科大学では、さらに50人程度の非常勤スタッフを用意してデータ収集等に当たっている。データ収集と解析にかかる研究費は、本科学研究費と中国の科学技術院からの研究費を充当する。 研究の概要は、①疫学調査実施計画書の作成、②環境要因、生活習慣等の疫学データの収集、③リスク因子同定のための統計解析、特に水質の発症リスクへの影響度分析、④医療経済学的評価、⑤生活改善と水質改善の啓発活動の5つであるが、平成28年度に作成された疫学実施計画書に基づき、平成29年度にはリスク因子解析のための後天的要因、環境要因、先天的要因のデータ収集、水質データの収集、医療経済指標の関する情報収集を行い、さらに継続的な調査を続行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中華人民共和国河北省石家庄市(人口800万人)と河北省邯鄲市(人口300万人、食道癌多発地域:他地域の約5倍の罹患率)を調査対象とした。石家庄市は北京から新幹線で1時間南に下った河北省の省都であり、食道癌の平均的な発症地域である。邯鄲市は石家庄市から車で4時間南西に下った所で、食道がんの多発地帯が存在する。中国全土での胸部悪性腫瘍の拠点病院である河北医科大学第四病院とその分院である東病院の病院長と専門医、疫学専門家および診療情報管理士が研究計画の立案とデータ収集にあたる。 平成29年度は疫学実施計画書に基づき、中国河北医科大学第4病院スタッフと邯鄲市衛生局員の協力を得ながら、食道癌多発地域の住民の健康診断データの収集、水質サンプルの収集および内視鏡画像等のデータ集を行った。その一方で、食道がん予防に関する医療経済学的評価をどのように行うかの検討を行った。 (1) 中国河北省の2つの地域を疫学調査の対象とした。ひとつは邯鄲市周辺で多発地域である磁県と渉県である。癌検診やアンケート調査は渉県癌センター研究所で統括して行なっているデータを統計解析可能なフォーマットに作成し直して統計解析ソフトウエアに入力した。石家庄市の食道癌患者データと健常者のデータは、河北医科大学病院の診療記録と患者からの聞き取り調査、ならびに、住民の健診データと聞き取り調査から収集した。(2) 邯鄲市と石家庄市の飲料水(井戸、ため池、雨水)の水質を90箇所について調査した。取水や計測状況を視察して、データの収集方法に問題がないかを検討した。(3) 生活習慣の改善、水質改善にかける費用と、癌の発症抑制とそれによる医療費削減の関係を明らかにするためのモンテカルロシミュレーションの手法を習得した。そのためのパラメータの推定値は可能な限り中国で収集する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降の研究は食道癌リスク因子の同定、水質の食道癌発症への影響度分析および医療経済学的な分析を本格的に行う。 (1)リスク因子の同定:後天的要因、環境要因、先天的要因のすべての項目について、条件付きロジスティック回帰分析を行う。回帰モデルは適合度に注視しながら投入因子、変数変換、モデル構造を考慮する。 (2)水質の食道癌発症への影響度分析:同じ水源から飲料水を取水する場合のクラスターや地域のクラスターの影響を考慮した解析を行うために、一般化推定方程式の解析を行う。生活習慣等との交絡も考慮にいれたリスク因子解析を行う。 (3)医療経済学的な分析:飲料水の取水方法の改善や生活習慣の改善に対する啓発活動のコストが将来的にどの程度疾患の発症を抑制し医療費を削減できるか、今回の中国でのデータに基づき新しいコスト分析の疫学・統計学的な分析方法を検討する。シミュレーション研究とそのためのアルゴリズムの開発、プログラミングが必要となる。 4.癌予防のための施策の検討:生活習慣の改善ならびに飲料水から癌発症物質を除去する仕組みを構築する必要性を啓発するプログラムを開発する。啓発の内容、所要時間、用いるメディア、回数などを吟味して国際的に通用するプログラムを開発する。本研究ではこれらのマスメディアを利用した啓発活動に加えて、学術論文(疫学・公衆衛生学系の論文、JAMA、Esophagusなど)をわかりやすく市民に伝える方法を検討する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Actionable gene-based classification toward precision medicine in gastric cancer2017
Author(s)
Ichikawa H,Nagahashi M,Shimada Y,Hanyu T,Ishikawa T,Kameyama H,Kobayashi T,Sakata J,Yabusaki H,Nakagawa S,Sato N,Hirata Y,Kitagawa Y,Tanahashi T,Yoshida K,Nakanishi R,Oki E,Vuzman D,Lyle S,Takabe Ki,Ling Y,Okuda S,Akazawa K,Wakai T
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Journal Title
Genome Medicine
Volume: 9
Pages: -
DOI
Open Access
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