2016 Fiscal Year Annual Research Report
コレラ菌から地球規模での水の衛生微生物学的安全性を保証する
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16H05830
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 史人 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30423122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 一典 京都大学, 医学研究科, 研究員 (40710869)
竹村 太地郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60572899)
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
野中 里佐 獨協医科大学, 医学部, 助教 (70363265)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コレラ / ビブリオ / 薬剤耐性 / 水圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地理的に隔てられるが、食品の輸入等によるつながりをもつ3地域(チリ、ベトナム、日本)における水環境を研究対象とする。これら地域間における構成細菌叢の比較やその経時的な変動、病原遺伝子・薬剤耐性遺伝子の拡散機構をゲノムレベルで解明することで、ゲノム微生物学的環境評価に基づいた水資源の安全性の確保を目的とする。同時に、水系感染の主要な病原細菌のひとつであるVibrio属細菌、特に、コレラ菌の全ゲノム解析を行い、限定された抗原型のコレラのみが流行を引き起こす原因およびそのプロセスの解明と、予防疫学の観点から新たな流行株出現予測に資する本菌の環境動態を明らかにすることを目的とした。地理的に隔てられるが食品の輸入等によるつながりをもつ3地域、チリ、ベトナム、日本における水環境中に生存する微生物叢の全体像、ヒトの健康安全性への直接的な脅威となる可能性が示唆されている薬剤耐性遺伝子の拡散状況、病原微生物Vibrio属細菌のゲノム多様性とその環境中における生態を明らかにするにあたり、上記3地域を対象としたⅠ) 環境水中の微生物叢構成細菌の量的解析、Ⅱ) 自然環境に存在する薬剤耐性遺伝子の分布と量的解析、Ⅲ) Vibrio属細菌の全ゲノム解析、Ⅳ) 水平遺伝子伝達とそれに対する細菌の備える免疫機構(CRISPR/Cas)との相関の結果と考えられるゲノム変動、ならびに菌数制御機構等の解析を行っている。本年度は、特に定期的なサンプリングをどのように実施するのかを検討し、最も間隔の空いているチリにおいても3ヶ月に一度のサンプリングを実施することとし、実際にコレラが全ての地点で単離できた。そして、一部については全ゲノム配列を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書時点での予定は下記の通りである。 1.各調査研究実施国における環境水の採取 環境水の採取は各国にて10検体ずつ、チリ(テムコ周辺、アンタファガスタ周辺各5ヶ所)、日本(愛媛漁港、東京湾、神戸港を予定)、ベトナム(北部ナムディン省チュクニン郡近郊10ヶ所)にて行う。同時に水温、塩濃度、溶存酸素濃度等の基礎データの収集を行う。 2.各検体からの細菌DNA抽出およびメタゲノム解析 各水検体を0.22umメンブレンを用いて濾過し、細菌群をメンブレンに付着させ、Power Water DNA Isolation kitを用いてDNAを抽出する。抽出したDNAを用いて、16S rRNA遺伝子の可変領域を含む460 bpをPCRにて増幅する。増幅産物を次世代シークエンサーMiSeqにて解析し、環境水に存在する細菌群の構成を可能な限り種レベルで半定量的に解明する。以上の解析はすべてIllumina社公開の16S rRNA 菌叢解析プロトコールに準拠する。 3.V.choleraeならびにVibrio属細菌の分離およびゲノム配列取得・系統解析 各水検体を用いて、V. choleraeおよびVibrio属細菌の分離を行う。TCBS培地を用いた選択培養、分離コロニーのNaCl感受性による再スクリーニング、PCR法を用いた分離菌株の菌種同定を行う。同時に各株のゲノムDNAを抽出後、MiSeqを用いてゲノム配列情報を取得する。さらに、全ゲノムSNP(一塩基多型)を用いた高精度系統解析を行い、環境中のVibrio属細菌の系統関係を明らかにする。 これらのうち2)以外は、完了していることから、概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のサンプリング、解析1)と3)を継続する。すなわち、 1) 各調査研究実施国における環境水の採取 環境水の採取は各国にて10検体ずつ、チリ(テムコ周辺、アンタファガスタ周辺各5ヶ所)、日本(愛媛漁港、東京湾、神戸港を予定)、ベトナム(北部ナムディン省チュクニン郡近郊10ヶ所)にて行う。同時に水温、塩濃度、溶存酸素濃度等の基礎データの収集を行う。 3) V.choleraeならびにVibrio属細菌の分離およびゲノム配列取得・系統解析 各水検体を用いて、V. choleraeおよびVibrio属細菌の分離を行う。TCBS培地を用いた選択培養、分離コロニーのNaCl感受性による再スクリーニング、PCR法を用いた分離菌株の菌種同定を行う。同時に各株のゲノムDNAを抽出後、MiSeqを用いてゲノム配列情報を取得する。さらに、全ゲノムSNP(一塩基多型)を用いた高精度系統解析を行い、環境中のVibrio属細菌の系統関係を明らかにする。 さらに、調製したDNA検体を用いて、定量PCRによる薬剤耐性遺伝子の量的解析と分布の解析を行う。定量PCRは水産養殖で検出頻度の高い種々の薬剤耐性遺伝子(tet(M), sul2, floRなど)および臨床分野で注目されるカルバペネム耐性遺伝子について行う。特にカルバペネム耐性遺伝子が検出された場合には、耐性菌株分離を行い、より詳細な分布を明らかにする。さらに同種間、異種間の遺伝子伝達に関与するファージ、プラスミド等の伝達因子の同定を行う。
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Research Products
(6 results)