2018 Fiscal Year Annual Research Report
Versatile health effects in Bangladesh residents exposed to ground water arsenic
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16H05834
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
姫野 誠一郎 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (20181117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角 大悟 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (30400683)
宮高 透喜 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (50157658)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒ素 / 免疫能 / 呼吸機能 / 曝露評価 / バングラデシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにバングラデシュのヒ素汚染地域と対象地域から収集した約700名の血液、毛髪、爪のサンプル、および、飲料水の元素測定はほぼ終了したが、現在なお、各種サイトカイン、バイオマーカーの測定を続行している。ヒ素曝露と糖尿病、喘息様症状、さらに認知能力への影響について、症状に関する検査と血液中バイオマーカーの比較を実施した。ヒ素曝露と糖尿病との関係について明らかにするため、耐糖能検査も行って毛髪、爪、飲料水中ヒ素濃度との関係を検討した。その結果、ヒ素曝露濃度が高くなるほど、血糖値のみならず、耐糖能に影響があることがわかった。また、特に女性で糖尿病症状が強いこともわかった。 呼吸機能、及び、血中IgE濃度とヒ素曝露レベルとの関係を調べた結果、明らかに喘息症状と思われる症状を示す人の頻度がヒ素曝露レベルが高いほど多かった。また、ヒ素曝露濃度に応じて血中IgE濃度が上昇していた。このことは、ヒ素による免疫機能への作用が喘息症状の発現に何らかの影響を及ぼしていることを示唆しており、現在、さらに他のサイトカインの測定を行っている。 ヒ素汚染を受けた人の認知機能が低下しているかどうかについて、世界中で用いられている認知能力検査であるMini-Mental State Examination(MMSE)を実施するとともに、血中brain-derived neurotropic factor(BDNF)濃度との関係を調べた結果、ヒ素曝露レベルの上昇に応じて、MMSEスコアが低下し、BDNF濃度が低下していた。 今年度は、これらの研究成果を国際的な学術誌に投稿するとともに、国際ヒ素学会、日本ヒ素シンポジウム、日本免疫毒性学会でバングラデシュの共同研究者であるHossain教授とともに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプリングに関しては、研究開始当初に日本人がバングラデシュでテロ被害に遭った影響もあり、出遅れていたが、現地の共同研究者の努力もあり、ほぼ終了した。また、サンプル中のヒ素濃度のみならず、呼吸機能、耐糖能、MMSEを用いた認知能力検査など、多様な健康影響の調査を実施することができた。現在、さらなるバイオマーカーの測定を続行している。 本調査研究で得られた研究成果を、Springer社から出版された単行本"Arsenic Contamination in Asia"において報告するとともに、国内外の学会で講演して発表することができた。現在投稿中の論文も複数あり、最終年度には、さらに多くの論文として研究成果を国際的に報告できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに多くのサイトカインの測定を終了しているが、サイトカインはそれぞれが複雑に影響し合っているため、相互の関係性に関する解析を進めるとともに、必要な追加測定を行っていく。これらの免疫機能に関する生化学的測定値が、喘息、糖尿病、認知能力の低下などにどのように関与しているかを総合的に解析していく。 尿中の総ヒ素濃度、化学形態別ヒ素濃度を測定することができたので、この結果に関する解析を進めるとともに、ヒ素曝露レベルが年齢(特に子供)、性別、母子関係、食事摂取内容によってどのような影響を受けているかを解析する。 最終年度は、さらに多くの論文を公表する。
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