2016 Fiscal Year Annual Research Report
中国におけるクリプトコックス髄膜炎の発症状況と真菌学的、免疫学的背景の調査研究
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16H05841
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 和義 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10253973)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中国 / クリプトコックス / 髄膜炎 / 潜在性感染 / 免疫学的背景 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中国南部に位置する広東省広州市を中心にエイズ非合併クリプトコックス髄膜炎の発症状況と、その背景にある真菌学的及び宿主の免疫学的要因について調査研究を実施した。 研究協力機関である広州市の中山大学医学部附属第三医院の倫理委員会に研究計画を申請し承認を得た。研究代表者と研究協力者とで中山大学を訪問し、中国側の研究協力者とディスカッションを行い、研究計画及び研究手法について確認し必要な調整を行った。クリプトコックス髄膜炎9症例から得られた9菌株についてDNAを採取し、PCRによりCryptococcus neoformansとC. gattiiを同定するとともに、multilocus sequence typing(MLST)解析を行った。その結果、9株のうち2株はC. gattii(1株 VGI、1株 VGII疑い)、残り7株はC. neoformans(MLST解析ですべてST5、VNI)であった。 潜在性クリプトコックス感染の存在の可能性にアプローチするために、クリプトコックス症患者及び健常者ボランティアの本真菌に対する細胞性免疫応答性を評価する目的で、主要なT細胞抗原である98kDaマンノプロテイン(MP98)の遺伝子発現ベクターを大腸菌に導入しリコンビナントMP98を作製した。当初エンドトキシンの混入により末梢血リンパ球の非特異的な反応が問題となったが、エンドトキシンフリーの大腸菌を用いることで解決することができた。今後は、この真菌特異抗原を用いることで末梢血T細胞のクリプトコックスに対する応答性を解析することが可能となった。 中国におけるクリプトコックス髄膜炎の発症状況をより正確に把握するために、同じく南部の江西省がん州市にあるがん南医学院附属第一医院と共同研究の実施に関して合意を得ることができた。今後は、両施設との共同研究により中国南部における本真菌感染症の状況について調査研究を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力機関である中国広州市の中山大学医学部附属第三医院との共同研究が円滑に開始でき、既にクリプトコックス9株からDNAを採取し遺伝子解析を実施した。潜在性クリプトコックス感染へのアプローチに必要な真菌抗原MP98にエンドトキシンの混入という問題が生じたが、エンドトキシンフリーの大腸菌を用いることで解決することができた。さらに、江西省がん州市のがん南医学院附属第一医院と共同研究の実施に関して合意が得られ、中国におけるクリプトコックス髄膜炎の発症状況のより正確な調査研究が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度における円滑な共同研究の開始を受け、2年目からは本格的な症例登録を進める。真菌学的な解析だけでなく、真菌抗原に対する免疫応答性と臨床情報との関連性についての解析も実施する。当初の中山大学に加えてがん南医学院とも積極的な共同研究を展開する。
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