2016 Fiscal Year Annual Research Report
Algebraic Complexity Theory: New Approaches and Algorithmic Applications
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16H05853
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
ルガル フランソワ 京都大学, 情報学研究科, 特定准教授 (50584299)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 計算量理論 / アルゴリズム / 代数的問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、理論計算機科学の諸問題を解くにあたり、代数的手法の役割を追究することである。代数的問題の計算量の解析に着目してきた「代数的計算量理論」の研究と、代数的な手法を応用してきた「アルゴリズム理論」をそれぞれ発展させ、結合させることを目標とする。具体的には(A)代数的計算量理論に対する新しいアプローチの開発(B)代数的手法を新たな理論計算機科学の問題に応用すること(C)代数的計算量理論に基づく計算問題における計算の複雑さの定量化及び分類を目指す。28年度はこの3本柱に基づき研究を推進し、以下の成果を得た。 まず、行列積の計算量に着目した。この問題は数学や計算機科学において極めて重要な問題でありながら、その計算量が未だ明らかになっていない。本研究課題の最終目標は一般行列の乗算を求めるアルゴリズムの開発であるが、28年度は主に疎行列(成分のほとんどが零である行列)の乗算を求める問題を対象にした。疎行列に特化したアプローチを導入し、従来のアルゴリズムより速くこの問題を解く量子アルゴリズムを構築することに成功した。密行列に関しては、分散計算の枠組みで行列積の研究を推進した。2015年にCensor-Hillelらにより示された行列積の分散型アルゴリズムを拡張し、行列積以外の代数的な問題(行列式を求める問題など)に対する分散アルゴリズムを開発した。 次は、代数的な手法を代数以外の問題に応用する研究を推進した。まず、上述の新しい疎行列乗算アルゴリズムを用い、データベース理論の重要な問題(二つのデータベースの結合演算の計算など)を解く新しいアルゴリズムを開発した。分散計算の枠組みでは、上述の新しい分散アルゴリズムを適用し、グラフの直径の計算や全ペア最短経路問題など、グラフ問題の諸問題を従来のアルゴリズムより効率よく解く分散アルゴリズムを構築することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、28年度は計画通りに本研究課題の足元を強化する基本的な成果は数多く得ているので、順調に発展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は28年度中に得られた成果をさらに発展させながら、本研究課題の目標を達成するための新たなアプローチを開発していく。具体的には、以下の計画で研究を推進する予定である。 まずは高次元テンソルの乗算の計算量の究明を目指す。28年度は行列積の計算量に着目したのに対し、29年度は行列の一般化である高次元テンソルを主な対象にし、従来の行列積の解析のために開発されてきたアプローチを拡張し、高次元テンソル積に対する新しいアルゴリズムを構築していく。また、高次元テンソル積アルゴリズムを理論計算機科学の諸問題(部分グラフ発見問題や充足可能性問題など)への適用も追究する予定である。 次に、分散計算の枠組みで代数的な手法を(代数的な構造を持たない)一般の問題に適用する研究を推進する。28年度の研究に引き続き分散計算の枠組みで新しいアルゴリズムの開発を目指すが、29年度は代数的な構造を持たない問題を主な対象とする予定である。具体的には、三角形発見問題やネットワークの直径の計算という、分散計算において中核的な問題に対するアルゴリズムを開発していく。また、量子分散アルゴリズムにも着目し、分散計算の枠組みで量子計算の優位性と限界の究明を目指す。 また、多項式時間アルゴリズムを持つ問題に特化した量子計算量理論の研究も推進する予定である。古典の枠組みでは、多項式時間アルゴリズムを持つ問題に特化した計算量理論(fine-grained complexity theory)はこの5年間深く研究されてきたが、先行研究のほとんどは時間計算量に着目しているため、量子計算への展開が困難である。29年度は通信計算量理論や質問計算量理論など、時間計算量理論以外の理論に着目し、fine-grained complexityの概念を導入するとともに、量子計算への展開を目指す。
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Research Products
(7 results)