2016 Fiscal Year Annual Research Report
Practical design of molecular self-assembly systems due to cotranscriptional folding and optimization
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16H05854
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
関 新之助 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (30624944)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子自己組織化 / 共転写性フォールディング / フラクタル / 設計最適化 / RNA折り紙 / 折り畳みシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象である折り畳みシステムは、共転写性フォールディング(cotranscriptional folding)による計算の数理モデルである。転写とはDNA鎖上の遺伝子のRNAコピーを合成する過程である。RNAポリメラーゼが転写元のDNA鎖を走査し、A -> U, C -> G, G -> C, T -> Aという規則に従ってRNA鎖を合成する。合成されるRNA鎖は、転写の最中から自分自身に折り畳まり複雑な高次構造を取る。このように転写と折り畳みが同時進行する現象を共転写性フォールディングと呼ぶ。Gearyらはこの現象を制御して、ナノスケールRNA矩形タイルの自己組織化技術「RNA折り紙」を2014年にScienceにて発表した。 本研究のH28年度の計画課題は、(WP1)折り畳みシステムによる共転写性フォールディングの構造生成能力の研究および(WP2)折り畳みシステムの設計最適化である。 WP1では、フラクタルの一種であるHeighway dragonを自己組織化する折り畳みシステムを設計した。フラクタルの自己組織化では分子にある種の計算を行わせる必要があり、故に分子自己組織化におけるベンチマークの一つである。設計したシステムは、2進数の数え上げ、有限オートマトンの実装、およびビット列の分岐を共転写性フォールディングにより行っている。 WP2では、折り畳みシステムの設計簡素化を目指す。RNA折り紙は4種類の高分子A, C, G, Uから成る鎖をA-U, C-Gの結合則に従って折り畳む。それに対し、折り畳みシステムでは高分子の種類数や結合規則の複雑さに制限がない。これらに制限を課す事で、実験室での折り畳みシステムの実装に近づく事が出来ると考えられる。実装の弊害となり得る自己結合則を除去するアルゴリズムを提唱し、その出力が最小である事を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時点の計画通り、3つのワークプランのうちWP1, 2をH28年度中に完了した。WP1の成果であるHeighway dragonを自己組織化する折り畳みシステムは、国際会議DNA23に投稿中である。また国際ワークショップIWNC2017 (Akita, May 12-14th)、Oritatami2017(後述)で発表される。 WP2の成果である自己結合則除去アルゴリズムに関する論文は、国際会議DCFS2017 (Milan, Italy, July 3-5th) に受理された。またこのWPで提案された折り畳みシステムによる別の折り畳みシステムの動作模倣(シミュレーション)について、ある種の模倣不可能性を証明した論文を国際論文誌Fundamenta Informaticaeに投稿したところである。 これらに加えて、国際シンポジウムMFCS2016、国際会議DNA22、および国際論文誌Theoretical Computer Scienceに論文が採録された。 折り畳みシステム同士の動作模倣に関する共同研究をUniv. Arkansas (Fayetteville, USA)およびYonsei University (Seoul, Republic of Korea) と進めている。YonseiのYo-Sub Hanとは日本学術振興会の二国間交流事業に応募、採択された(H29, 30年度)。 折り畳みシステム研究の順調な進展に伴い、国際ワークショップOritatamiを設立する運びとなり、代表者が第一回の主催を任された。国際会議UCNC2017 (Fayetteville, USA, June 5-9th) の一環として開催する。加えて、米国の権威ある学術雑誌SIAM Newsより折り畳みシステムに関する寄稿の要請を受けた。代表者が寄せた論文は本年5月号に掲載される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、WP3「遅延1ないし結合価1の折り畳みシステムの計算能力」の研究を進める。遅延と結合価は折り畳みシステムのパラメータであり、ここで詳しい説明は省略するが、これらが1に設定されると折り畳みシステムの計算能力に制限がかかる事が予想されている。 これに加えて、H28年度に大きな進展があった折り畳みシステム同士の動作模倣に関する研究を発展させる。上述した遅延パラメータであるが、これは転写速度と折り畳み速度の比をモデル化していると考えてよい。実験環境に応じて遅延の値は適切に選ばれなければならない。故に与えられた折り畳みシステムを、異なる遅延の環境で再設計する事は実験の観点からも重要である。Univ. ArkansasのMatthew J. Patitz , Trent A. Rogersとの共同研究として進めている。成果は6月に国際会議ISAAC2017に投稿する。 折り畳みシステムに関する研究の国際的進展を更に促す為に、国際ワークショップOritatami2017を開催する。RNA折り紙の提唱者Cody Geary (CalTech, USA), 折り畳みシステムのチューリング完全性を証明したNicolas Schabanel (CNRS, Univ. Paris 7th, ENS de Lyon, France) を基調講演者として招待し、また日米韓の若手研究者による講演も予定している。 これらの成果に基づき、折り畳みシステムに関する研究を更に推進する予算として、今秋にH30年度科研費若手研究(A)ないし基盤研究(B)に申請する。また研究の更なる発展の為に海外からの博士研究員の受け入れを積極的に進めるための予算の申請も合わせて行う。
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Research Products
(13 results)