2017 Fiscal Year Annual Research Report
マルチ同位体指標によるヒマラヤ水系で起こる化学的風化作用の全容解明
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16H05883
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉村 寿紘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 研究員 (90710070)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 化学風化 / ヒマラヤ / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では世界でも最も風化作用が活発なヒマラヤ水系の最下流部であるバングラデシュの河川水と地下水を調査対象として,先端の同位体指標によって大気CO2増加に対して負のフィードバックをもつ化学風化反応の全容を明らかにするものである。本研究で岩石の主要構成元素のうち安定同位体比をもっている元素に着目し,各元素の安定同位体比からケイ酸塩風化,炭酸塩風化,二次鉱物の生成など陸域で起こる化学風化作用の履歴を読み解く。H28年度に導入したイオンクロマトグラフ,液体クロマトグラフの装置2台をオンライン接続した分析システムを確立し,その成果として環境試料からの迅速な多元素自動分離手法の主著論文が,分析化学分野の主要な英文国際ジャーナルJournal of Chromatography A誌に受理された。当初の目的の主要元素のみならず,微量金属のリチウムを海水から分離することにも成功し,本論文の中で報告している。この手法を用いてヒマラヤを源流にもつガンジス・ブラマプトラ川の河川水および地下水の溶存態金属の安定同位体比を測定中で,ストロンチウムに関してはすでに投稿済みである。マグネシウム,カルシウムに関しては全ての測定を終えており,本年度内に順次投稿を予定している。すでに当初の研究対象の試料については分離を終えているが,ケイ酸塩風化強度の指標であるリチウム同位体比も測定可能になったので新しく分離を開始した。また,バングラデシュのみでなく他のアジア地域の試料も入手したので,広くアジア全体の風化システムの全容解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分析手法の論文がYoshimura et al.(2018) Journal of Chromatography Aとして出版された。二族元素のストロンチウム,マグネシウム,カルシウムの分析は終えており,順次英文国際誌に投稿している。また当研究計画以外にも活用するなど波及効果が大きかった。炭酸カルシウムやクロロフィルからのマグネシウムの分離に活用し,学会発表で成果を広くアピールした。また水試料よりも技術的に困難な,岩石試料からの微量元素(リチウム)の分離・濃縮手法を実現し分析化学専門誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
第一のターゲットであるガンジス川・ブラマプトラ川の河川水およびベンガル平野の地下水試料については今年度に同位体データの測定を概ね完了した。特に問題はなく順調に推移しているので,成果を順次投稿している。また,新しくタイやミャンマー,カンボジアの主要な河川(メコン川,エーヤワディー川など)試料を入手したので今後測定を予定している。
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Research Products
(5 results)