2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05889
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉岡 亘 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80425496)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水腎症 / ダイオキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイオキシン類は難分解性・脂溶性の環境汚染物質であり、健康影響が懸念されている。ダイオキシン曝露が引き起こす毒性現象の特徴は、(1)多様な異常が現れること、(2)これらの異常の中に発達時期特異的に現れるものがあることである。本研究は (2)の問題について、毒性発現機序を解明することを目標とした。 ダイオキシン曝露された仔マウスは水腎症を発症する。水腎症とは腎実質の菲薄化を特徴とする症状であり、進行すると腎機能を喪失する。水腎症が仔マウスで発症するのは生後数日までにダイオキシン曝露された場合であり、それ以降の曝露では発症しない。このように発達段階のごく短い期間でだけでダイオキシンによって水腎症が発症する原因は長年不明であった。 本研究において、ダイオキシン曝露によって仔マウスに発症する水腎症に関連して、尿管閉塞を伴わないこと、尿管蠕動運動に異常が観られないこと、尿濃縮障害と多尿が生じることを見出した。さらに、抗利尿薬DDAVPで多尿を抑制することで水腎症発症が抑制されることを明らかにした。また、prostaglandin E2 (PGE2)合成系酵素であるCOX-2, mPGES-1の遺伝子発現レベルが曝露により仔マウス腎で顕著に増加し、尿中ではPGE2が増加していた。尿濃縮に重要な働きを持つaquaporin-2の遺伝子発現レベルは減少していた。これらの結果から、曝露によるPGE2の異常な増加が尿濃縮を妨げて多尿をきたし、排泄限度を超えた尿がバックプレシャーをかけることで腎実質が失われると推定された。 ダイオキシン曝露しても水腎症発症に抵抗性を示すことが知られていた成熟マウスにおいては、PGE2合成系酵素の発現上昇、apuaporin-2発現低下、多尿が生じなかった。成体では曝露によるPGE2合成酵素の誘導が生じないことが水腎症発症に抵抗性を示す原因と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である新生子腎が化学物質に脆弱である原因の解明に関して、ダイオキシンについてはPGE2合成系の誘導の有無が腎障害の有無の原因となることを明らかにできた。よって、目標を達成し順調に研究が進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
PGE2合成系の誘導を引き起こす別の化学物質である炭酸リチウムについて曝露実験系を構築し、曝露が引き起こし得る腎障害の病態とその原因となる分子基盤を明らかにする。
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