2018 Fiscal Year Annual Research Report
酸化触媒を担持した石炭灰による閉鎖性水域の難分解性底泥の分解材の開発
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16H05892
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浅岡 聡 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 助教 (60548981)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 難分解性有機物 / ゼロ価鉄 / フェリハイドライト |
Outline of Annual Research Achievements |
・有機物分解実験用堆積物の採取:2018年6月に大阪湾奥に位置し,陸域からの有機物負荷を強く受ける西宮防波堤沖で,エクマンバージ採泥器にて有機物分解実験用の堆積物を採取した。採取した堆積物は有機物分解実験まで冷凍保存した。採取した堆積物の全有機炭素濃度,全窒素濃度は,それぞれ,2.3%,0.28%であった。 ・有機物分解用材料の作製:光触媒である酸化チタンを石炭灰造粒物に担持することを試みたが,年度内に酸化チタンの担持法を確立できなかった。そのため,酸化チタンの代わりに,硫酸鉄溶液に石炭灰造粒物を浸漬し,石炭灰造粒物表面にフェリハイドライトを含浸法にて担持し以下の有機物分解実験を行った。 ・有機物の分解実験:500 mLのポリエチレン容器に堆積物100 gおよび,200 mLの大阪湾奥の濾過海水を添加し,エアーポンプにて通気し好気条件下で有機物分解実験を行った。試験区は堆積物のみの対照区,石炭灰造粒物添加区,フェリハイドライト担持石炭灰造粒物添加区,石炭灰造粒物とゼロ価鉄併用添加区,ゼロ価鉄添加区を設けた。尚,堆積物100 gに対して,石炭灰造粒物やゼロ価鉄の添加量は10 gとした。90日間の分解実験で堆積物の有機炭素が最も分解された試験区は対照区であり,分解率は24.7%であった。一方,全窒素は,フェリハイドライト担持石炭灰造粒物添加区で最も減少し,分解率は33%であった。したがって,堆積物中の有機炭素の分解においてフェリハイドライトやゼロ価鉄は有効に機能していなかった。今後,マンガンやモリブデンなどの酸化物を石炭灰造粒物に担持し,有機物の分解特性を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度までに,堆積物の有機物分解材料を最適化する予定であったが,前年度の成果より瀬戸内海沿岸の難分解性有機物の由来は,植物プランクトンの死骸がヒューミンなどに変化したものであり,これらに最適な分解材料を新たに検索する必要性に迫られた。植物プランクトンの死骸由来のヒューミンを分解するために石炭灰造粒物へ担持する金属酸化物の選定と担持方法の最適化に時間を要していることが,進捗の遅れの原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初,島根県内で開発した有機物分解材料を用いて現場実証試験を行う予定であったが,漁業関係者,自治体との折衝が難航し,かつ金属酸化物担持石炭灰造粒物について,試作段階であることから,関係各所において現場実証試験について理解が得られなかった。このことから,現場を模した屋外水槽(広島大学竹原ステーション:水産実験所で実施)へ自然海水をかけ流して閉鎖性水域を再現して,堆積物中の有機物の分解特性を評価することとし,当初の目的を達成することとする。
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Research Products
(1 results)