2016 Fiscal Year Annual Research Report
熱分解法によるプラスチック/木質バイオマス混合廃棄物の化学原燃料化の実現
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16H05893
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊谷 将吾 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40757598)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共熱分解 / プラスチック / バイオマス / シナジー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究計画は各種プラスチック―木質バイオマス主要3成分(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)の共熱分解機構および両物質間の相互作用(シナジー効果)の解明である。今年度はまず、プラスチックとしてポリエチレン(PE)、木質バイオマスとしてブナ(BW)を選択し、プラスチック―木質バイオマス間の相互作用の全体像を把握することから始めた。分析方法は、熱重量―質量同時分析装置(TG-MS)による熱分解生成物のその場解析および固定床反応装置を用いた熱分解生成物の回収試験とした。 BW:PE = 100:0, 60:40, 40:60, 0:100の混合試料を調製し、それらをTG-MSを用いて室温から10 ℃/minで昇温しながら熱分解した。BWは約370℃、PEは約480℃で分解ピークを示した。生成物は直接MSに導入することで、BWおよびPE由来の熱分解生成物がどの温度域で発生するか明らかにした。混合により、PEはBWの分解ピーク温度に影響を及ぼさなかったが、BWはPEの分解ピーク温度を高温側にシフトさせることが明らかとなった。 固定床反応装置を用いた熱分解生成物回収試験もTG-MSと同じ温度プログラムで実施した。その結果、これらの共熱分解により、セルロース由来のレボグルコサン、不飽和結合およびカルボニルを側鎖に持つリグニン由来の熱分解生成物の収率が増加し、一方、PE由来の熱分解由来のオイル成分が重質化することが明らかとなった。これらの作用は、PEの熱分解生成物がBW由来の熱分解生成物に水素を与える水素ドナーとして働き、一方、BWが炭化する過程で生成する水素ラジカルがPEのラジカル停止反応を誘発したためであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラスチックとしてポリエチレン、木質バイオマスとしてブナを選択し、ポリエチレンの熱分解生成物が木質バイオマス主要3成分のうちセルロースおよびリグニンの熱分解に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。これらの発見をベースに、今後より詳細な機構が明らかになると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きプラスチックおよび木質バイオマス間の共熱分解における相互作用のメカニズムを明らかにする。詳細な機構を解明するためにセルロースや抽出したリグニン単体を用いて、また、別のプラスチック種を用いて、相互作用を検討する。
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