2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study of multi-band solar cells using dilute nitride semiconductors
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16H05895
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
八木 修平 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30421415)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高効率太陽電池 / 希釈窒化物半導体 / 半導体超格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、GaAsを母体材料として窒素のδドープ層を周期積層した「窒素δドープ超格子」を用いて、従来の単接合太陽電池に比べ大幅な性能向上が狙える「中間バンド(マルチバンド)型太陽電池」を開発することを目的としている。 平成28年度は、主にGaAs中窒素δドープ超格子が作る中間バンドエネルギー構造の制御技術の確立と、キャリアドーピング特性について重点的に研究を進めた。その結果、以下の成果が得られた。(1) RFプラズマ分子線エピタキシー法により作製した平均窒素組成2%程度までの超格子について、超格子周期や窒素含有量などの構造パラメータに対するバンド端エネルギーの系統的な変化を明らかにした。また、GaAsスペーサー層へInを混晶化することでE-バンド端エネルギーを1.0 eV程度まで低下させることができた。この結果、中間バンド太陽電池材料としてのエネルギーバンド構造の最適設計・制御が可能となった。分光エリプソメトリーによる測定結果から、E+バンドに起因する光学遷移は1E4 cm-1のオーダーで吸収係数に寄与していることを示し、太陽電池として十分な光吸収性能を持つことが明らかになった。(2) 超格子へのキャリアドーピングによるn型化と電気特性評価を行ったところ、800度程度のアニール処理によりドーパントSiが活性化するとともに電子移動度が一桁程度増大した。得られた超格子の電子移動度は最大約250 cm2/Vsで、比較のため作製したGaAsNランダム混晶に比べ高い値を示すことが明らかになった。次年度は引き続き結晶成長技術の更なる高度化を図りつつ、上記の成果を基にして太陽電池構造の試作と評価を行い、高効率化へ向けたデバイス設計指針を得る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バンド構造制御やキャリアドーピングなど、目的とする中間バンド型太陽電池への応用に向け必要な要素技術の研究が着実に進展した。超格子構造が従来のランダム混晶に比べ優れた電子輸送特性を示した他、これまであまり明確でなかったE+バンドに起因する光学吸収特性について定量的なデータを得るなど、太陽電池吸収層材料として用いる上で有用な結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果により超格子パラメータに対するバンド構造の振る舞いが明らかになった。H29年度は引き続き結晶成長技術の更なる高度化を図りつつ、太陽電池構造の試作と評価を行い高効率化へ向けたデバイス設計指針を得る。具体的には以下の項目に取り組む。(1) 太陽電池デバイスシミュレーションによる超格子構造の最適設計:デバイスシミュレータを用いて、超格子層の組成分布やデバイス内の各領域の膜厚などの条件に対する発電特性を見積もることで、高効率化に向けた設計指針を得る。(2) GaAs中窒素δドープ超格子を用いた中間バンド型太陽電池の試作と動作検証:前項のデバイスシミュレーションの結果を基に設計した太陽電池構造を分子線エピタキシー法により実際に試作し、発電特性を評価する。価電子帯-伝導帯間のギャップエネルギーに比べ低エネルギーの光を複数照射して量子効率や光電流スペクトルを測定することで、中間バンド准位を介した2段階光吸収の効果を定量的に検証し、中間バンド型太陽電池としての動作検証を行うとともに、光電流を増大させるための試料構造を検討する。
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