2017 Fiscal Year Annual Research Report
石薬(鉱物・化石由来生薬)の本草博物学的考察に基づくマテリアルサイエンスの構築
Project/Area Number |
16H05900
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 謙 大阪大学, 総合学術博物館, 特任講師(常勤) (00619281)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 本草学 / 生薬学 / フィールドワーク / 石薬 / 化石 / 鉱物 / 博物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、石薬のフィールドワークを中心に研究活動を展開した。伝統的に使用されてきた数多くの石薬群を対象とし、マテリアルプロファイルの構築や基原解明を調査した。また、さらに、日本だけでなく、中国・台湾・欧州のフィールドワークを通じ、そのマテリアルプロファイルを集積するための調査を精力的に行った。研究には、国立台湾大学およびペルージャ大学の協力を仰ぎ、石薬の使用実態を調査した。国内では、国内の各所に点在する石薬標本を実地調査した。研究には、公益財団法人益富地学会館、きしわだ自然資料館および石見銀山資料館の協力を得て実施した。日本各地において、江戸期を中心に現存する石薬の調査を進め、その一部は科学分析を行うべく収集を実施してきた。科学分析については、電子顕微鏡およびX線分析装置を継続的に導入し、フィールドワークにて収集したサンプルの分析を実施した。特に石見銀山における研究においては、その成果が産経新聞(平成29年5月19日夕刊)において、1面で取り上げられたことをはじめとし、多数の新聞社やテレビ局において報道がなされた。本研究は、石見銀山資料館および島根県立古代出雲歴史博物館で開催された展覧会「世界遺産登録10周年記念 石見銀山展-銀が世界を変えた-」にて紹介がなされた。また、研究成果を速報として、1報の学術論文として公表した。今年度の研究は、医療用ととしての石薬のみならず、冶金やその他の用途に用いる石薬においても研究を実施し、新たな石薬研究の可能性を攻究することとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年度計画は、国内外の鉱物・化石由来生薬「石薬」のフィールドワークを継続して行い、その中で特筆すべきものについて精査することを目的とした。2017年度は多くの報道がなされたことから、社会への成果の還元という点において、本研究の進捗状況は極めて良好であるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
①石薬博物学的資料の解読情報による特徴分析に基づいた基原の同定:国内外の石薬の情報収集や伝統医薬市場での石薬市場品の現地調査を行い、供給状況を把握する。中華圏の産地における過去の生産状況や現在発掘されている産地の情報を把握する。歴史的検証に基づき産地において形状・生産・加工・流通状況などの情報収集を行う。その際呼称や過去および現在の産地に留意して調査を進める。国内外の博物館を含む専門施設にて所蔵される石薬資料標本および古文献を主に解析する。同時に医療関係者の資源に対する認識・理解に関する情報など資源保護への認識や使用実態把握に努める。具体的には、当博物館所蔵標本を含めた全国の博物館所蔵標本を調査する。 ②石薬のマテリアルプロファイルおよびその新規学術的評価系の構築:薬効の再現性には、品質の均一化が必要である。石薬は産地、地層や続成作用により、含有成分や状態が左右されるが、石薬として適する条件を設定できれば石薬の代替品の開発のヒントが見つかる。そこで博物館に保存され、提供可能な石薬サンプルなどの資料を電子顕微鏡およびそれに付随するX線分析装置を活用し、非破壊または微量分析法による科学分析を行い、基原・産出地の同定と判別を試みる。古来、石薬の使用例は治療だけに留まらない。医療以外の用途の石薬にも調査の領域を広げた資料収集と分析研究を実施する。 ③本研究のアウトリーチ活動の一環として、大阪大学総合学術博物館にて研究成果の一端を公開する展覧会を実施する。
|
Research Products
(4 results)