2017 Fiscal Year Annual Research Report

東北地方太平洋沖地震震源近傍における沖積層の高精度解析と地殻変動メカニズム推定

Research Project

Project/Area Number	16H05903
Research Institution	Chuo University
Principal Investigator	丹羽雄一中央大学, 理工学部, 助教 (20705371)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords	三陸海岸 / 沖積層 / 地殻変動 / 堆積物コア / 14C年代
Outline of Annual Research Achievements	東北地方太平洋沖地震の震源近傍における地殻変動解読の一環として、三陸海岸中部(リアス海岸北限)に位置する津軽石平野において、前年度までに掘削した沖積層試料の解析を行った。堆積相の分布と14C年代測定値から、当該平野では、千年スケールの相対的海水準上昇を反映した、累重的なデルタ堆積物の発達と、デルタ通過後の厚い湿地堆積物が認められることが明らかとなった。これらの沖積層の特徴から、当該平野が沈降傾向にある可能性を指摘し、三陸海岸中～南部が過去数千～1万年間では沈降傾向にある可能性を強固にした。この内容は国際誌に受理された。三陸海岸北部に位置する小本平野においても沖積層試料の解析と年代測定を行った。当該平野においても、最近1万年間の海水準変動に対応して平野地下の地層が形成されたことが明らかになった。平野の発達や堆積相分布の特徴からは、津軽石平野で認められたような沈降傾向を示唆する特徴は見られなかったことから、小本平野は津軽石平野に比べると沈降傾向が顕著ではない可能性が示唆された。また、小本平野よりも北方に位置する久慈平野においては、新たに堆積物コアの掘削を行った。現在までにコア試料の半割、記載、年代測定を行っている。現時点では、当該平野を構成する地層が最近1万年間に形成された浅海性堆積物であることまで明らかになった。平成30年度に久慈平野における更なる分析や詳細な堆積環境・地殻変動については検討を進める予定である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 研究計画で調査範囲と設定した三陸海岸のうち、これまでは南部でしか沖積層解析と地殻変動の推定ができていなかったが、平成29年度の研究でリアス海岸北限の津軽石平野までデータを追跡でき、論文化もできた。さらに、三陸海岸北部における検討や堆積物コア掘削も進めることができたため、平成30年度に予定している解析を進める目途が立った。これらの理由から、概ね予定通りに進捗していると判断した。
Strategy for Future Research Activity	今後は、三陸海岸北部のうち、沖積層試料採取が進んでいる平野では、分析や年代測定を進め、平野の発達過程や地殻変動を推定していく予定である。また、沖積層試料が未採取の三陸海岸最北部では掘削も行う予定である。解析した沖積層データに基づいて推定した地殻変動を三陸海岸の南北間で比較し、地殻変動様式の三陸海岸内での違いを考察するとともに、測地記録や海成段丘の分布とも比較し、地震サイクルの検討も進める予定である。