2017 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・サプライチェーンの健全化に関するデータ中心科学的研究
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16H05904
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
水野 貴之 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (50467057)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経済物理学 / 複雑ネットワーク / サプライチェーン / グローバリゼーション / サステナビリティ / 企業の社会的責任 / ビッグデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
サプライチェーンを中心に,グローバルな経済ネットワークにおけるヒト・モノ・カネの流れを観測し,気づかぬ間に世界中に点在するコンプライアンスに反する企業や組織等にヒト・モノ・カネが流れ込む経路を遮断するための複雑ネットワーク科学に基づく手法を構築する.この目的を達成するために,(1)ヒト・モノ・カネの流れに関するビッグデータの整備と蓄積,(2)要注意組織の属性分析,(3)ヒト・モノ・カネの流れに関する世界経済と要注意組織との統合解析,(4)要注意組織依存度の測定と公開,(5)政策立案の科学的支援について研究をしている.平成29年度は(1)から(3)について研究をおこなった. (1)ヒト・モノ・カネの流れに関するビッグデータの整備と蓄積では,ニュースの新規性と話題性指標を開発し,人権・労働・環境に関する各事件の人々の関心度を定量化した.関心度の高いニュースについては,事件の影響による株価の下落が,取引や提携関係のある企業にも波及することを示した.グローバルな企業間の取引関係データと,国際産業連関表や通関データを結合させることによりモノとカネのグローバルな企業間の流れのネットワークを構築した. (2)要注意組織の属性分析では,メディアでネガティブな情報が報じられた企業がグローバルな経済ネットワークを構成するコミュニティの一部に集中していることを明らかにした. (3)要注意組織と世界経済の統合解析では,世界経済から要注意組織に間接的に流れ込むモノとカネの主要経路を特定した.また,主要経路を塞いだ場合に,代替となる経路を順に特定し,世界経済と要注意組織を橋渡しするブリッジ企業とブリッジコミュニティを全てリストアップした.ブリッジ企業とブリッジコミュニティは,特定の地域の業種に偏っており,その地域の業種に対する政策が,非常に効率的で効果的であることを,招待講演等を通じて発信した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の査読付き国際会議に採択され,また,マスメディアで研究成果が取り上げられ,国内外からの招待講演を引き受けるなど成果が出ている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降も,(1)ビッグデータの整備と蓄積,(2)要注意組織の属性分析,(3)要注意組織と世界経済の統合解析,(4)要注意組織依存度の測定と公開,(5)政策立案の科学的支援を軸に研究を進めていく.具体的には,企業と個人の出資関係リストからグローバルな資金の流れと,企業グループ内での資金や中間財の流れのネットワークを構築する.ネガティブ企業が集中するコミュニティの属性と,そこに含まれるネガティブ情報が報じられた企業の特徴との関係を明らかにする.ネガティブ企業対策のために,特定の企業に取引規制がおこなわれた場合に,どのような代替経路が新たに生まれるのか,サプライチェーンの時間変化について予測するアルゴリズムを構築する.取引規制による機会損失を見積り,要注意組織とはつながらず機会損失を最小限にするための代替経路について提案していく.
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Research Products
(22 results)