2018 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・サプライチェーンの健全化に関するデータ中心科学的研究
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16H05904
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
水野 貴之 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (50467057)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経済物理学 / 複雑ネットワーク / サプライチェーン / グローバリゼーション / サステナビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
世界に点在する要注意組織と企業間関係のビッグデータを用いて,(1)ビッグデータの整備と蓄積,(2)要注意組織の動的分析,(3)要注意組織と世界経済の統合解析,(4)要注意組織依存度の測定と公開,(5)政策立案の科学的支援の順に研究を進め,要注意組織と我々の生活との繋がりを明らかにする.平成30年度は,(1)から(5)について,下記の研究を実施した. (1)ビッグデータの整備と蓄積では,「米国通関データ(米国内の企業と米国外の企業との取引履歴)」と「135万人の世界的なマネーロンダリングの監視対象人物(組織・企業)の関係者リスト」を名寄せにより結合することによって,要注意組織と米国経済との時間変化する関係性を解析できるようにした. (2)要注意組織の動的分析では,要注意企業に指定されることにより,サプライチェーンが,どのように組み替えられるのかを調査した.同じく,景気の低迷や自然災害等によるサプライチェーンの組み換えを調査し,前述の結果と比較した. (3)要注意組織と世界経済の統合解析では,世界中の大株主から要注意企業に投資マネーが流れる経路がないかを調査し,多くの運用機関や各国の年金が流れ込む経路があることを見出した. (4)要注意組織への依存度の測定と公開では,本年度は翌年度に向けて,要注意企業等への資金の流入経路を表すフットプリントから,主な大企業と大株主について要注意組織への依存度を算出し,公開する準備を整えた. (5)政策立案の科学的支援では,渡辺(研究協力者)から経済学的な知見の提供を受け,フットプリントを用いて世界中から法令違反の企業や犯罪組織に資金が流入する主要経路を塞ぐための企業間の取引を制御するシステムについて提案した.また,法令違反の企業や犯罪組織に間接的に繋がらない国際分業のあり方と促進政策を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年10月、国際関係の知識を持つデータ科学者を研究協力者として採用する予定であったが、着任が4月になることが判明した。研究成果公開に向けてのシステム構築には当該協力者が不可欠な為、主要製品と要注意企業との間接的関係の解明、企業間の取引規制政策の提案については研究代表者のみで進めたが計画に遅れが発生した。協力者の着任後、システム構築を行い、翌年度に開催される学会において報告することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ビッグデータの整備と蓄積では,これまでに収集した「135万人の世界的なマネーロンダリングの監視対象人物(組織・企業)の関係者リスト」と「150万社の世界の主要企業間取引リスト」を最新のデータに更新し,各国の政策とネットワークの変化との関係等を可視化する. (2)要注意組織の動的分析では,時間変化する要注意人物(組織・企業)間の関係性を調査する.勢力の拡大を目指す企業(組織)は他の企業(組織)との提携(や人間関係)を密にしていくことにより,コミュニティを他の企業体や組織に侵食させて拡大していく.企業や組織の提携・合併・解散をネットワーク上のパーコレーションモデルを応用してモデル化し,要注意企業等の勢力の拡大・縮小を予測する. (3)要注意組織と世界経済の統合解析では,前年度までに構築した要注意企業等の勢力変化のモデルと製品や資金の流れのモデルを用いて,健全な企業と要注意企業等との繋がりをシミュレーションにより再現し,経済・安全保障政策の検証に活かす. (4)要注意組織への依存度の測定と公開では,要注意企業等への資金の流入リスクが高い取引を表示するシステムを構築し,公開する. (5)政策立案の科学的支援では,ブロックチェーンを応用し,世界中から法令違反の企業や犯罪組織に資金が流入する主要経路を塞ぐための企業間の取引規制政策を作成する.また,前年度までに構築した健全な企業と要注意企業等との間の資金や物資のネットワーク上の流れのモデルを用いて政策の有効性を検証する.
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