2016 Fiscal Year Annual Research Report
Control of Cellular Responses with 3-in-1 Chip Mimicking In Vivo Microenvironment
Project/Area Number |
16H05906
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
船本 健一 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (70451630)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 生物・生体工学 / 流体工学 / ナノバイオ / マイクロ流体デバイス / がん微小環境 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素分圧・力学的刺激・化学的刺激の3つの因子を同時制御し、細胞群に対する複合作用の観察を可能にする3-in-1生体模擬チップを開発した。チップの底面中央に、細胞外マトリクスを模擬するゲル流路を配置し、それと接するように細胞培養液を注入する2本のメディア流路を配置した。メディア流路は場合に応じて分離/接続可能な構造とし、細胞培養液の流量を調整することで細胞への力学的刺激を制御し、細胞培養液中の生化学物質の濃度を調整することで化学的刺激を制御することにした。酸素濃度を調整した混合ガスを供給するガス流路を、他の流路に対して鉛直上方に配置することでガス交換の効率を向上させ、チップ内にガス透過性の低いフィルムを内包することで周囲環境からの酸素の流入を抑制した。各流路内の流れ場と酸素分圧の数値解析を行い、チップや流路の構造(形状およびサイズ)を最適化した。その後、実際にチップを作成し、酸素濃度に応じて燐光強度が変化するマイクロビーズを用いてチップ内部の酸素濃度を計測した。その結果、従来のデバイスでは不可能であった酸素濃度0.5%までの任意の酸素濃度の一様な低酸素状態や線形の酸素濃度勾配を、常酸素状態から15分程度で生成することができ、酸素分圧制御の高速化と制御範囲の拡大が実現された。また、開発したチップ内のゲル流路に、ヒト乳がん細胞(MDA-MB-231細胞)をコラーゲンゲルに混合して播種し、常酸素状態(酸素濃度21%)や一様な低酸素状態(酸素濃度0.5%)、酸素勾配(ゲル流路の左右で酸素濃度6%から17%)を生成して細胞の挙動を観察した。がん細胞は酸素分圧の変化に速やかに応答し、低酸素下において遊走が促進された。細胞の生存率はいずれの実験条件においても90%を超え、低酸素環境が細胞の生存に影響しないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた3-in-1生体模擬チップの開発を遂行でき、チップ内にがん細胞を単一培養し、酸素環境による挙動の変化を明らかにすることができた。次年度に予定していたがん細胞と血管内皮細胞の共培養についても前倒しして取り組んでおり、研究は順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発した3-in-1生体模擬チップを用いて、各種細胞に対する酸素分圧・力学的刺激・化学的刺激の3つの因子を同時制御したときの細胞群の挙動について実験を行う。昨年度に引き続き、チップ内にがん細胞や血管内皮細胞を単一培養し、酸素分圧の空間変化と時間変化を与えるとともに、力学的刺激と化学的刺激を負荷した場合の各細胞の応答を調べる。がん細胞はコラーゲンゲルに混合してゲル流路に播種する。血管内皮細胞はメディア流路内に播種し、流路壁面全体を覆うように血管内皮細胞単層を3次元的に形成する。2本のガス流路に混合ガスを供給することで酸素分圧を制御し、酸素濃度0.5%から21%までの任意の酸素濃度の一様な低酸素状態や、線形の酸素濃度勾配を有する空間変化を生成する。また、任意の時間間隔(数10分から半日)で混合ガス中の酸素濃度を変えることで時間変化を与える。力学的刺激と化学的刺激は、メディア流路に還流させる細胞培養液の流量と生化学物質の濃度により調整する。細胞の挙動の観察では、各細胞の生存率と増殖率、遊走能(移動距離,移動速度,方向)を3次元時系列の顕微鏡画像を取得して解析する。また、血管内皮細胞単層の物質透過性を、蛍光デキストランが単層を通過してゲル内に拡散する様子を定量化することで計測する。このとき、細胞内の低酸素誘導因子(HIF)や遊走能と骨格構造を制御するタンパク質を、免疫蛍光染色やウェスタンブロッティングにより可視化・定量化し、酸素分圧の変化に応じた細胞内シグナル伝達のスイッチングについて考察する。さらに、チップ内でがん細胞と血管内皮細胞を共培養するための培養条件の検討を常酸素条件下で行った後、任意の酸素濃度の一様な低酸素条件下での共培養を実施する。それらの結果に基づいて、がん細胞と血管内皮細胞の細胞間相互作用の酸素分圧に対する依存性を明らかにする。
|
Research Products
(3 results)