2017 Fiscal Year Annual Research Report
Control of Cellular Responses with 3-in-1 Chip Mimicking In Vivo Microenvironment
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16H05906
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
船本 健一 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (70451630)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 生物・生体工学 / 流体工学 / ナノバイオ / マイクロ流体デバイス / がん微小環境 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
開発した3-in-1生体模擬チップを用い、がん細胞や血管内皮細胞に対する酸素分圧・力学的刺激・化学的刺激の3つの因子を同時制御したときの細胞群の挙動の観察を行った。まず、昨年度に引き続き、ヒト乳腺がん細胞(MDA-MB-231)をコラーゲンゲルに混合してチップ内のゲル流路に播種し、細胞周囲の酸素分圧を制御したときの細胞の3次元挙動をタイムラプス観察した。酸素条件としては、酸素濃度21%の常酸素状態、酸素濃度0.5%までの任意の酸素濃度の一様な低酸素状態、酸素濃度の空間変化(ゲル流路の左右で酸素濃度6%から17%の酸素濃度勾配)または時間変化(8時間間隔で低酸素負荷と再酸素化)を生成した。乳がん細胞の3次元位置を時系列の顕微鏡画像から解析し、増殖率と乳がん細胞の遊走速度を計測した。乳がん細胞の増殖率は、低酸素下において常酸素下よりも高かった。乳がん細胞の遊走速度も酸素濃度に依存し、低酸素下の方が常酸素下よりも速い傾向が観察され、遊走速度が極大となる酸素濃度があった。また、酸素濃度勾配を生成した実験では、酸素濃度に依存した増殖率と遊走速度の違いにより、ゲル内の位置によって細胞の増加率が異なった。また、酸素濃度の時間変化を与えた実験では、酸素濃度の増減に応じた遊走速度の変化が観察され、乳がん細胞が酸素分圧の変化を感知して応答することが明らかとなった。さらに、チップ内でがん細胞と血管内皮細胞を共培養し、酸素濃度を制御する実験を行った。ゲル流路には上述の通り乳がん細胞を播種し、メディア流路にヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を播種した。常酸素状態および低酸素状態を生成して細胞培養を行った結果、細胞間の相互作用により、コラーゲンゲルの退縮具合に差が生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種細胞に対する酸素分圧・力学的刺激・化学的刺激の3つの因子を同時制御できる3-in-1生体模擬チップを開発した。内部に乳がん細胞を単一培養し、一様な酸素状態や酸素濃度の空間変化および時間変化を与える実験を行い、乳がん細胞の増殖率と遊走速度が酸素濃度に依存して変化することを明らかにした。また、がん細胞と血管内皮細胞をデバイス内で共培養し、酸素濃度を制御したときの細胞間の相互作用の観察を実現した。このように、当該年度までに計画していた研究を実施し、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した3-in-1生体模擬チップ内で、実際のがん微小環境を模擬してがん細胞と血管内皮細胞を共培養し、細胞間の相互作用に対する酸素分圧・力学的刺激・化学的刺激の複合作用を解明する。がん細胞はコラーゲンゲルに混合してゲル流路に播種し、血管内皮細胞はメディア流路内に播種して流路壁面全体を覆う血管内皮細胞単層を形成する。2本のガス流路に混合ガスを供給することで酸素分圧を制御し、一様な常酸素状態と低酸素状態、酸素濃度の空間変化および時間変化を与える。力学的刺激と化学的刺激は、メディア流路に還流させる細胞培養液の流量と生化学物質の濃度により調整する。3次元時系列の顕微鏡画像を取得し、各細胞の生存率と増殖率、遊走能(移動距離,移動速度,方向)を計測するとともに、血管内皮細胞がゲル内に侵入して行う血管新生と、がん細胞がゲル内から血管内皮細胞単層を通過する血管内侵入を観察する。また、細胞内の低酸素誘導因子(HIF)や遊走能と骨格構造を制御するタンパク質を、免疫蛍光染色やウェスタンブロッティングにより可視化・定量化し、酸素分圧の変化に応じた細胞内シグナル伝達のスイッチングについて考察する。さらに、低酸素応答を利用した抗がん剤を細胞培養液に混合して注入し、抗がん剤ががん微小環境の細胞群に与える効果を評価する。以上の実験結果を基に、がんの増殖と転移の機構と血管新生の機序を細胞レベルで解明し、細胞群の制御法について検討する。
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Research Products
(3 results)