2017 Fiscal Year Annual Research Report
面状圧力分布情報に基づく安全な装着型アシストロボットの開発と制御
Project/Area Number |
16H05915
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
舟洞 佑記 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20633548)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 福祉・介護用ロボット / 装着型アシストロボット / 制御工学 / 機械力学・制御 / 知能ロボティックス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は研究項目のうち主に「制御における圧力分布情報の有意性」と「圧力分布に基づく体幹部アシスト制御」に取組んだ。これらの成果を国内学会6件(査読無、内1件招聘講演)、国際学会2件(査読有)で発表した。研究推進に有用なDH技術協議会への参加・研究報告に加え、テクノ・フェア名大、フロンティア21エレクトロニクスショーで広く一般向けに成果を紹介した。詳細を以下に示す。 「制御における圧力分布情報の有意性」では、圧力分布センサを配置した腕部用試作機を製作、基礎的な実験を行った。人体に力を伝達する部位の形状を、人体と密着する形状に成形することで、制御に利用可能なレベルの接触圧力分布が計測できた。加えて、「面状圧力センサからの装着者の運動意図推定」における圧力分布計測値から運動意図推定、及び、圧力分布指令値の生成ができる可能性が見えた。次年度は、実機ベースで両研究項目の検討を進める。 「圧力分布に基づく体幹部アシスト制御」では、「逆運動学を活用した制御法」と「接触圧力分布予測制御法」の二手法をシミュレーションで詳細に比較し、両手法とも人体の痛覚耐性限界値を十分に下回る範囲で接触圧力が制御できる点、「接触圧力分布予測制御法」が圧力分布指令値への追従性が良い点を明らかにした。腕部での実機製作過程を踏まえ、体幹部においても、人体表面に密着するロボットの形状を検討するために、距離画像センサKinect V2を6台用いた3次元表面形状計測環境を構築した。体幹部の屈曲・側屈・回旋の基本動作を計測、人体表面形状の時系列データを取得・解析し、体幹部用ロボット構造の検討を進めた。その過程で、マーカレス表面形状変形追跡手法を考案した。構造検討の知見、試作機製作におけるセンサ・アクチュエータの選定・制御法実装の知見、3Dプリンタの知見を組合せることで、全身アシスト機構の製作が次年度にできる目処が立った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試作機の製作過程で、圧力分布情報を計測可能にする機構の検討が必要になった点、3Dプリンタの印刷にノウハウが必要であった点から試作機製作が遅れ、試作機ベースでの実験に多少の遅れはあるもの、全体としてはおおむね順調に進んでいる。 「圧力分布に基づく体幹部アシスト制御」について、シミュレーションによる手法の詳細な検討が終了した。シミュレーションを通し、装着型ロボットにおいて人体との接触圧力分布を制御するには「接触圧力分布予測制御法」が有用である点が明らかになった。次年度夏頃までに体幹部用の検証用試作機を製作し、当該手法を実装して検証を進める。 「制御における圧力分布情報の有意性」において、まず試作機の製作に不可欠となる装着者との接触圧力分布を広く計測にするための要素を検討した。これまで接触圧力分布を直接計測可能な装着型ロボットは存在していない。一般的にはベルト等を介して人体に力を伝達するが、ベルトの剛性では伝達する力の偏りやベルト部全体が引っ張って力を加える可能性があり、所望の接触圧力分布が計測できない恐れがある。そこで、剛性の高いリンクにおいて人体の装着部に密着するリンク形状を採ることで、広く分散した力が伝達可能、かつ、接触圧力分布を所望のレベルで計測可能になると仮定した。実際に人体表面の三次元形状計測データから製作した試作機による計測実験を通じて、先の仮定の試作機で制御に利用可能なレベル(制御周期・分解能・再現性・着脱への非依存性・運動との関係性)の圧力分布情報が取得できることを確認した。この結果を受け、体幹部用の検証用試作機、及び、全身アシスト機構も同様の枠組みで製作する。また、「面状圧力分布センサからの装着者運動意図推定」においても運動意図推定に有用なレベルを満たした計測ができたため、試作機による実機実験ベースで装着者運動意図推定、及び、アシスト指令生成法の検討を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進んでいるため、これまで通りの研究計画に沿って実施する。 平成30年度は、試作機を用いた実機検証実験をメインに研究を進める。昨年度製作した腕部用試作機は特定個人に特化した形状になっていた。ある程度一般的な腕部形状を反映した試作機を製作、検証実験計画を名古屋大学工学部倫理部に申請して、倫理審査を受ける。その後、腕部を対象に「制御における圧力分布情報の有意性」の被験者検証実験を行う。まずは「接触圧力分布予測制御法」を利用し、試作機における検証を進める。加えて、「面状圧力センサからの装着者の運動意図推定」においても先の試作機を用いて実機データを計測・解析し、運動意図推定法とアシスト指令生成法を構築する。これらの試作機を用いた実機検証の知見を「圧力分布に基づく体幹部アシスト制御」に活かし、平成30年度前半に3Dプリンタによる試作機の製作を集中して行い、夏頃を目処に倫理審査の申請、その後、被験者実験を実施する予定である。年度後半には被験者実験を踏まえた手法の改良に取り組み、個々の成果をまとめる。また体幹部用と単関節部用の試作機を組合せることで、「持ち上げタスクに対するアシスト制御と評価」に用いる全身アシスト機構を製作、入出力周り等の基本的なソフトウェアを実装し、平成31年度実施予定の実機検証実験につなげる。 最終年度である平成31年度は、主に装着実験と成果のとりまとめを行う。最大接触圧力・筋活動量・心拍などに基づき人体への負荷軽減効果の定量評価を行うとともに、アンケートによる官能検査を実施して感覚的なアシスト効果も統計的に評価する。なお人に対する装着実験に際しては、名古屋大学工学部倫理部の審査を受け、適切に実験を行う予定である。
|
Research Products
(9 results)