2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H05916
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
池上 剛 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (20588660)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運動システム / 他者表情認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は社会生活において、他者の表情や行為から、その人の感情や行為の意図を理解したうえで行為を選択する。このような他者理解の能力が不十分であると、社会適応に困難を抱える。他者理解の基盤となる認知機構の解明は、このような社会性障害を改善する治療法や環境の開発に必須であるが、未だ良く分かっていない。本課題は、他者理解能力の一つである表情認知に焦点を当て、その認知機構の解明を目指す。平成29年度は「運動システムが他者表情の認知に関与する」という仮説検証を目的とし、実験群として顎骨切除術の術前・術後3年間までの顎変形症患者とコントロール群の健常者を対象にし、他者表情の識別能力を調べる行動実験を行った。仮説に従えば、手術による顎顔面(上下の歯と口を含む顎全体)運動システムの改善が、因果的に患者の他者表情の認知能力の改善を導く。実験では、他者の表情が、喜び・悲しみ・怒り・驚き・不安・嫌悪のどの感情を表出しているかを、被験者が回答した。平成29年度は実験群77名、コントロール群20名の実験データを取得することができ、合計実験群189名、コントロール群46名のデータを得ることができた。これまでのことろ、仮説を支持するように、手術とその後のリハビリによって顔運動システムが改善した術後の患者の方が、術前患者に比べて他者表情判断の成績(正答率)が良い傾向が認められている。今後はコントロール群のデータを増やし、実験群と比較し、より詳細な解析を行う。実験内容の詳細に加え、実験者が守るべき義務および研究参加者のプライバシーの保護と権利に関しては書面で説明を行い、書面による同意を得た後に実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に引き続き、雇用している実験補助員が精力的に実験を行っているため、順調に実験を遂行することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、術前から術後3年までの顎変形症患者を対象として、縦断的調査と横断的操作を行う大規模研究である。当初200人の患者を対象に実験を行うことを計画していたが、患者の症状のばらつきが大きいため、実験対象者群を300人まで増やすことを予定している。平成30年度は100人の患者データ、100人の健常者データを取得することを目標に、実験を継続する。ヘルシンキ宣言を尊重し、人格の尊重の観点から、被験者の自発性が保証された状況でインフォームド・コンセントを得ること、研究参加者のプライバシーを厳格に守ることを徹底する。
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