2016 Fiscal Year Annual Research Report
筋疲労の機序の解明-超音波剪断波エラストグラフィを用いたアプローチ-
Project/Area Number |
16H05918
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤木 亮太 芝浦工業大学, システム理工学部, 助教 (20581458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 筋疲労 / 筋の剛性率 / 筋力 / 活動交代 / 下腿三頭筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,速筋線維が優先的に動員される「最大努力での繰り返しの筋力発揮」に伴う筋疲労,及び,遅筋線維が重要な役割を果たす「最大下努力での持続的な筋力発揮」に伴う筋疲労を想定し,これら2つの筋疲労課題前後の筋の機械的性質及び課題中の筋張力の変化を,超音波剪断波エラストグラフィにより定量した骨格筋内部の硬さ(剛性率)を用いてモニタリングする.加齢による筋萎縮が速筋線維で顕著であることを踏まえ,両課題で得られた知見に年齢差を絡めて包括的に検討することにより,筋疲労の機序の全容解明を果たし,筋疲労除去のための方策を新たに創出するための科学的根拠を獲得する. 昨年度は,予備実験を重ねる中で,本研究の肝となる超音波剪断波エラストグラフィを用いた筋の剛性率のモニタリングの長所を生かしやすい課題から取り組むこととした.それ故,年度始めに想定していた「最大努力での反復的な関節トルク発揮による筋疲労課題」ではなく,「最大下努力での持続的な関節トルク発揮による筋疲労課題」に取り組んだ.被験者は若年男性に限定し,下腿三頭筋(足関節底屈筋群)を対象として,全力の10%という低強度の力発揮を1時間継続させた結果,予想通り,下腿三頭筋間で活動交代が起こり,筋の剛性率という新たな視点を加えることにより,筋疲労の機序に対する理解を深めることができた.しかしながら,活動交代という複雑なメカニズムを解明するまでには至らなかった.まずは,その成果を,学会大会での口頭発表・論文投稿により発信していく.現時点で,論文はほぼ完成しているので,5月中には国際学術誌に投稿できるよう執筆を進めていく.実験データの質を考え,良質なジャーナルへの投稿にチャレンジする.学会大会での発表は9月を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋力測定システムの導入と,予備実験を通じて,当初の計画と順番を入れ換えて実施することを決断するのに時間を要したため,出だしは遅れたが,年間通じてという意味では,2017年度5月には1つ目の投稿論文の執筆が終わるペースで実験を進めることができたため,概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り,平成28年度の研究内容については,学会大会での口頭発表・論文投稿により発信していく.5月中には良質な国際学術誌への投稿を果たし,学会大会での発表は9月を予定している. 平成29年度の研究については,先行研究において,下腿三頭筋ほど複雑な様相を示さないことが示唆されている大腿四頭筋(膝関節伸展筋群)を対象として研究を実施する.また,平成28年度とは異なり,より強度の高い疲労課題(全力の30%~50%に相当する強度での疲労課題)を疲労困憊まで実施させる実験を行う.この強度であれば,活動交代も見られないため,実験結果の解釈は楽になることが期待される.疲労耐性の性差については,先行研究で言及されているものの,はっきりとしたメカニズムは解明されていないことを踏まえ,若年男女を対象として実験を実施し,筋疲労に対する性の影響を検討する.また,若年男性に対しては,筋力トレーニングを数週間実行することにより,疲労耐性がどのように変化するのかについても検討する.測定手法については,前年度同様とする. 現時点で,既に,筋力トレーニングに関する予備実験を開始している.昨年度まで,膝関節伸展筋群を対象とした筋力トレーニングを実施する際は,研究室内の筋力計を使用していたが,今年度は,研究代表者が所属するトレーニングルームを利用して,効率的にトレーニングを実施する予定である.また,ある程度被験者の参加にも目途が立っており,順調に予備実験が進めば,夏前ぐらいから本実験を開始できることが期待される.
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